住民訴訟控訴事件 控訴理由書

令和元年(ネ)第●号 住民訴訟控訴事件
控訴人  阿部洋二 外●名
被控訴人 本件組合管理者並木克巳

控訴理由書


令和元年11月18日


東京高等裁判所第●民事部 御中

控訴人ら訴訟代理人弁護士 小沢一仁


※ 本書面で用いる用語は原判決の例による。


目次
第1 総論
第2 各論
1. はじめに
2. 原判決の事実認定の誤り(及び法令解釈・適用の誤り)
(1) 落札者決定の事実はない
(2) 仮契約の成立の事実はない
(3) 親会社への吸収合併ではなく、弟会社への吸収合併
(4) 委託契約とした間違い
(5) 工事契約を請負契約としなかった間違い
(6) 設計図書は、要求水準書で代行できない
(7) 大規模改修は必要ないのではなく、調査せず大規模改修を行うことが問題
(8) 分別収集した不燃ごみを焼却することが問題
(9) 建設業法、地方自治法(208条)を適用法令から外した問題
3. 控訴人阿部ら6名による第2次監査請求の適法性について(後段第4で詳述)
4. 「本件委託契約」が実質的随意契約であったこと
(1) 廃業を通知したエンジニアリング社の応札を認めたこと
(2) 廃業するエンジニアリング社の入札を認めたのは、エンバイロメント者の受注を認めたことと同義語であること
(3) 大規模改修工事を含む計画を委託契約として偽ったこと
(4) 入札制限の狙いは、他の焼却炉メーカの参入排除であった。
(5) 実質的随意契約であったこと、総まとめ
ア)~オ)
5.本件委託契約の契約額が過大であること
  (1)大規模改修工事の必要性の検査を欠いた法令違反
  (2)焼却量の観点から大規模改修工事の対象施設は減らすことができること
  (3)本件委託契約による予定価格は、事実上落札企業が変更したこと
 6.本件委託契約の債務負担行為の財源根拠がないこと
 7.廃棄物処理法違反があること
 8.本件仮契約の締結につき議会の議決を経ていないこと
 9.小括
第3 原判決がもたらす不都合について
1. 建設業法に違背する委託契約
2. 廃業する企業の入札参加を是とする先例
3. 検査すら行わず大規模改修工事が大手を振って出来るようになる
4. 構成市の分担金の裏付けのない事務組合の債務負担行為
5. 構成市が分別収集した不燃ごみを一部事務組合で燃やしてよいとする原判決
第4 (本案前)控訴人阿部ら6名による第2次監査請求の適法性について
1. 原判決の判断
2. 原判決が誤りであること
第5 結語




第1 総論
   本件訴訟は、被控訴人とエンバイロメント社との間の本件委託契約(本来的には、本件長期包括契約とすべきであるが、原判決では、それを本件委託契約として使っているために、本控訴理由書でも、同様の表現を使うことにする。)が、住民に相談なく進められただけでなく、地方自治法、建設業法、廃棄物処理法などの関係諸法令のほか、本件組合の条例などにも違背する契約であり、契約がそのまま進められれば、本件組合が、巨額の損失を受けるとして本件組合の構成3市の住民等が住民監査請求を前置したうえで提訴したものである。
   本件委託契約は、本件組合の焼却炉(以下「本件焼却炉」という。)の耐用年数を15年として見立て、大規模改修工事が必要であるとして進められた。もともと2000年に、本件焼却炉を建設したのは、住友重機械工業株式会社(以下「住重社」という。)であり、この大規模改修工事の競争入札に応札したのが、エンジニアリング社であり、エンジニアリング社が廃業してその権利を継承するとして契約締結したのが、エンバイロメント社である。エンジニアリング社、エンバイロメント社共に、住重社を親会社とする子会社であり、エンジニアリング社とエンバイロメント社は、いわば兄弟会社ということができる(甲14)。
本件では、住重社が建設した焼却炉について、本件組合が大規模改修工事を進める計画を立て、子会社であるエンジニアリング社が応札し、補修箇所等の提案をおこない、その直後に廃業し、エンバイロメント社が契約を受け継ぐという住重社系のメーカーによって、たらいまわし的に契約を進めていたことが、住民監査及び住民訴訟の経過の中で分かった。
その中での問題として、控訴人らは一審裁判で下記のような点を訴えてきた。
①  大規模改修工事の必要性の調査が行われていなかったこと
     本件施設は、建設時は住民説明会の中で耐用年数30年と説明された経過があり、起債返還が終わった時点(17年)で大規模改修工事を行うことを聞いて、驚きを禁じ得なかった。また、大規模改修の必要性の調査を行わなかったため、改修箇所の指摘や必要金額すら提示できず、公平な競争入札が行えなかった。
   ② 本件委託契約を委託契約として公告入札したこと
     本件組合の管理者である被控訴人は、当初本件計画を委託契約として説明した。しかし、本来であれば大規模改修工事を含む以上、請負契約として進めなければならなかった。明らかに建設業法の違反であった。詳細は、後述するように、請負契約とせず、設計図書や施工方法を示さず、エンジニアリング社に丸投げ委託するという、建設業法に違反する行為をした。
   ➂ 大規模改修工事の競争相手となる焼却炉メーカーを排除したこと
     公告時に、「入札参加者の備えるべき参加資格要件」として、本件組合での実績を条件にし、本来競争相手となる他の焼却炉メーカーを排除する入札資格条件を提示し、地方自治法に反した。
   ④ 廃業するエンジニアリングの入札そして落札を認めた。
    一般競争入札で、事業の開始時に廃業を予定している企業の入札を認めるなどは特別な配慮以外の何物でもなく、本件組合は、この事実を知りながら審査委員会に知らせず、落札させてしまった。
以上のように、本件委託契約は、①のように、その過半として大規模改修工事を含みながら、その必要性すら調査せず、自治体は、最小の資金で最大の効率を挙げるようにしなければならないという自治法に違反し、その上、②から④の契約手続きでは、一般競争入札とは、名ばかりに、実質随意契約、として、進めてきたことを訴えた。
  また本件委託契約を進めるにあたって、本件組合の管理者である被控訴人は、上記①~④の問題点のみならず、自治法や廃棄物処理法、本件組合の条例などに違反して、手続き事務を行ってきた。その詳細を下記に追加すれば、
  ⑤ ごみの減量化を配慮しないごみ廃棄量を前提とした計画
  ⑥ 条例上仮契約の定めを無視した違法な契約手続き
  ⑦ 構成市の財源の裏付けを持たない債務負担処理
  などである。
  原判決は、原審における控訴人らのこれらの主張をいずれも排斥し、控訴人らの請求を棄却した。
  しかし原判決は、事実誤認のうえ、存在する法令や条例の存否についての原告の主張について見落とし、さらに行政実例について、無知としか言いようのない解釈を進め、この判決が判例として独り歩きすれば、自治体行政上大混乱をもたらす内容の判示をした。控訴人らとしてはその内容に到底納得することができない。
  以下では、原判決の検討順序にほぼ従いながら、原判決の判断が誤りであることをそれぞれ指摘する。また、原判決が、判例として残ってゆくならば、自治体行政の現場にもたらすであろう混乱を、各事例に応じてまとめた。

第2 各論

 1 はじめに
   控訴人らは一部事務組合である本件組合を構成する清瀬市、西東京市、東久留米市の住民である。一部事務組合とは自治体の業務(事務)の一部を他の自治体と共同して処理するために作られる特別地方公共団体である。
   構成自治体の住民には、納税者として自ら納めた税金の使い道を監査し、改めさせるように求める権限が与えられている。本件訴訟は本件組合の管理者を被控訴人(被告)とした住民訴訟である。もとより管理者は与えられた権限を法・条例の定めに従って行使し、事務の執行をつかさどることを職務としている。法・条例に従って行われている限り、住民訴訟は起こらない。
   訴訟にはそれ相応の費用と時間が必要であり、住民訴訟においては、仮に控訴人ら(原告ら)が、勝訴となった場合においても、控訴人ら住民には直接的な利益は何もない。ただ、不当に費消された税金を自治体財政に取り戻し、新たな乱費を押しとどめることができるのみである。
   住民訴訟は全住民の利益のために行われるのであって、控訴人らにとっては大きな自己犠牲を伴っているものなのである。見るに見かねて提訴して訴訟当事者になるのであって、費用、法知識、行政実務などそのハードルは大変に高いものがある。好き好んでやるものではないのである。しかも、一部事務組合は存在として市民の目からはたいへん遠いものであり、なおさらである。
   もともと、自治体の業務(事務)は、各種の法・条例に従って行われるものではあるが、ごまかしたり、ことさら法・条例の枠を広げたりしようとする自治体の行為は後を絶たない。あからさまな法違反については司法の厳しい審判が下されるものの、法網をくぐるようなものについては、事例があまりにも行き過ぎて法整備が必要となり、法整備がなされるまで温存されてしまうケースが多々あるのが実情である。本件事案は法網をくぐったつもりが実はくぐれていなかったといったケースに該当する。
   しかるに、原判決は法網を解釈で押し広げて、本件組合の行為を容認してしまった。閉めるべき扉を広げ、開けっ放しにしてしまった。その結果は今後の行政行為をゆるゆるの法解釈の枠の下に置き、原判決が望むと望まざるにかかわらず、地方行政の事務執行をずさんなものに変えてしまうおそれが極めて高い。
   焦点となっている柳泉園クリーンポート(本件施設)は住重社が建設工事を受注し、2000年11月から本格稼働されている。当初から関連子会社のエンジニアリング社が運転やメンテナンス等を行っていた。
   本件組合の職員が新しく導入された施設の運転や維持管理に精通しているとは考えにくく、エンジニアリング社、あるいは同社を通じて住重社の技術的指導を仰いでいたことは想像に難くない。本件組合としてそのような関係の継続が好ましいものと映っていたとしてもこれまた、不思議ではない。
   民間企業であれば、そのまま契約を継続すればいいことだが、競争入札を義務付けられている公共団体としてはそれほど簡単な話ではない。ここに競争入札を装った随意契約への動機が生じる。
   控訴人らは柳泉園クリンポート長期包括運営管理事業とその委託の話が巷から伝わってきて以後、ことの推移を注視することにした。最初の疑問点は、大部分の業務を委託するにもかかわらず、職員の人件費が減らない、膨大な経費が必要であるにもかかわらず構成自治体では何の話も出ておらず、もちろん審議すら行われていない、委託契約とされながら、その中に請負工事に該当するものが含められている、などであった。そこで情報公開条例を利用したり、本件組合に直接説明を求めたり、議会に対して丁寧な審査を行うように陳情を提出したりした。そのような努力を積み重ねたのちに、他に方法がなくなり、裁判所の法的な判断を得るべく住民監査請求に及んだものである。
   控訴人らは、本件委託契約締結に至るまでの本件組合の行為の中に違法及び法を潜脱する行為があり、これらを容認すれば、行政が積み重ねてきた実務上の原則が根底から覆されることになるだろうと危惧している。原判決は、被控訴人が行った行為を追認し、許容することで控訴人らの危惧を現実のものにしようとしている。
   控訴審においては、改めて違法な、また法を潜脱した行政事務を正常化するべく、厳正な審査の下、適切な判決を下されるように求めるものである。

 2 原判決の事実認定の誤り(及び法令解釈又は適用の誤り)
 (1)原判決第2第2項(2)エ(4頁)のうち、「本件審査委員会は平成29年2月25日、エンジニアリング社を最優秀提案者と選定し、本件入札手続きの落札者と決定した」との部分は、入札審査委員会は最優秀提案者と認めただけで落札者と決定していないから誤りである。管理者においても、また管理者会議の記録においても落札者を決定した形跡はない。
 (2)同(2)オ(4頁)のうち、「委託契約の仮契約(以下「本件仮契約」という。)を締結した。」としているが、原告は「仮契約は成立していない」と主張しているから、争いのない事実ないし争うことを明らかにしない事実ではない。
 (3)同(2)カ(4頁)のうち、「エンジニアリング社の完全親会社であるエンバイロメント社を吸収合併存続会社とする吸収合併により、解散した。」としているが完全親会社とは、客観的事実ではなく合併に重みをもたせるために本件組合が主張しているに過ぎず、両社とも住重社の子会社であり、いわば兄弟会社である。争いのない事実ないし争うことを明らかにしない事実ではない。原判決がいかなる理由で「完全親会社」としているのか不明である。
 (4)同(2)ク 「本件事業に係る委託契約(本件委託契約)を締結した。」
    原判決は、本件事業に係る委託契約(本件委託契約)を締結したという事実を記載したものであると思料するが、控訴人らは、本来本件事業に係る契約を、委託契約として締結することは誤りであるとの認識のもとで、本件委託契約と表現している。
本件は、当初委託契約として入札手続きを行ったが、大規模改修工事を含み、建設業法から請負契約を結ぶ必要が生じ、本件組合の条例から議会確認事項となり、急遽平成29年4月20日に臨時議会を開催し、改めて請負契約として訴外柳泉園組合議会の承認を取った形になっている。
    したがって本件委託契約は、臨時議会後の契約書は、委託契約と表現するのではなく、請負契約と表現しなければならなかった。ところがこの段階でも委託契約として表現したために、この4月28日付の契約書には、「上記契約について、柳泉園組合を発注者として、請負者を事業者として、次の条項により契約を締結する」というように請負と言う断り書きが在った。(甲15) 
この様に控訴人らの本件委託契約という表現は、その表現が間違っているという認識の上に、使っている。その認識のないところで本「本件託契約」が独り歩きすれば、控訴人らが、委託契約でよいとしたかに誤解されるために、ここで事実認識の間違いを指摘しておきたい。
 (5)原判決第3 エa P14~15
    「本件委託契約が、請負契約の性質を含むものであったとしても、その一言で持って直ちに、本件入札公告に具体的な工事内容や当該工事内容に対応する請負金額が記載されねばならないと解釈すべき法令上の根拠は無い」
    上記(4)で述べた事実認識上の間違いが、ここで原判決の解釈間違いとして表れている。
「本件委託契約が、請負契約の性質を含むものであった」という認識自体が間違っている。建設業法第24条には、「委託その他いかなる名義をもってするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約としてみなしてこの法律を適用する。」とある。本件は、建設業法第24条から言って、入札公告から請負契約として進めなければならなかった。この「法令上の根拠がない」という判示は、明らかに事実誤認である。

 (6)同  P15~16
    「本件要求水準書等」が、「本件入札手続きにおける応募資料を作成するにあたって、契約関係当事者を拘束する条件が記載され」要求水準書によって「本件入札手続きにおいては、本件入札公告の段階からその完成させるべき仕事の内容が特定され」との記載がある。
要求水準書が、建設業法で言う設計図書や設計仕様書に代行できるかという問題である。しかも本件の場合は、委託契約として進められたうえでの要求水準書である。
工事契約等の請負契約で設計図書や仕様書が必要不可欠なのは、単なる言葉で、請負工事の内容を現すことができないからである。その意味で原判決が、ここで主張していることが通れば、建設業法は空洞化されることになる。
建設業法第19条には、建設工事の請負契約の当事者は、次に掲げる事項を書面化する必要がある。「1工事内容、2 請負代金、・・・」また「公共工事標準請負約款」には、「第1条 発注者及び受注者は、この約款に基づき設計図書(図面、仕様書など)に従い、・・この契約を履行しなければならない」とあり、請負契約には、どのような工事を進めるかの設計図書を用意し、その上で工事代金を定めるとしている。
委託契約の要求水準書が、設計図書の代行をすることはできない。判示は間違いである。

(7)第3 2 (2)
    原判決では、原告の主張として「本件施設の大規模改修工事の必要性は無い」との記載がある。しかし原告の主張の核心は、大規模改修工事の必要性の調査無くして工事が必要というのは間違いだと言っている。控訴人らの主張を、工事が必要ないとまとめてしまえば、それへの反論はしやすくなるが、しかしそれは明らかに事実誤認である。一般論として必要ないと言っているのではなく、原告準備書面(11)に記載のように、「第1の1 大規模改修の必要性について」「本件おいてまず最初に検討すべきことは、将来建替えるのか、それとも延命化工事を施して長寿命化するのかという方針である。かかる方針を決定するためには、施設の劣化具合の現状を正確に把握しなければならない」「訴外組合は、このような調査を全く行わず、施設のどこに不具合があるかの点検も行っていない。」と指摘している。大規模改修工事は必要ないというのが、原告の主張という記述は間違いである。
(8)同 イ (イ)a p20~21
原判決は構成3市と訴外柳泉園組合の一般廃棄物基本計画を読み間違っている。明らかな事実誤認である。
原判決は、「証拠(乙7ないし10)によれば、構成3市及び本件組合がそれぞれ作成した一般廃棄物処理基本計画(乙7ないし10。 廃棄物処理法6条に規定する一般廃棄物処理計画に当たるもの)において、不燃ごみ(又は燃やせないごみ)のうち選別された可燃分は焼却処理される旨が定められ、この点について、構成3市が作成した各一般廃棄物処理基本計画と本件組合が作成した一般廃棄物処理基本計画との間でそごはないことが認められるから、この点からみても、 本件委託契約において、構成3市において不燃ごみとして収集されたごみのうち可燃分を、本件組合が本件施設において焼却処理することを前提とすることに問題点は存在しない。」と判示する。
    ここでの基本計画では、不燃ごみとして一度構成市で分別されていたごみの内、混入した可燃分は、訴外柳泉園組合で焼却すると書いている。ところが訴外柳泉園組合で行われていたのは、不燃ごみとして運ばれてきたプラスティックごみ等を、可燃物として燃やすことが可能だからと言って、燃やしていたのである。構成市の基本計画から言って、それはもちろん間違いであり、判示は、間違った解釈をしている。
(9)原判決 別紙 P33~35
原判決の別紙で示された関係法令等の定めは、本件判決にあたって、適用法令として取り上げたものを関係法令等として示している。 ところが判例の別紙で掲げた関係法令等の定めは、第1地方自治法 第2 地方財政法 第3廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第4 柳泉園組合条例 となっているが、建設業法(同法第19条、24条)を欠く基本的な間違いを犯している。また第1の地方自治法であるが、債務負担行為の問題を考えるにあたり地方自治法208条の同年度内の歳入と歳出は同じくすることが重要であるが、その点も欠落させる間違いを犯している。

 3 (本案前)控訴人阿部ら6名による第二次監査請求の適法性について
    原判決は、控訴人阿部ら6名による第二次監査請求の適法性について、却下する旨を判示しているが、当該6名以外は適法に訴訟提起していることについて争いがないため、この件については、最後に詳述する。

 4 本件委託契約が実質的に随意契約であったこと、
 原判決は、本件委託契約が実質的に随意契約であったことを推認させる複数の事情につき個別に検討したうえで、控訴人らの主張を排斥した。
 例えば、入札参加資格要件の問題、参加資格を厳密にした点やエンジニアリング社のテスコ社に対する優位性、廃業予定のエンジニアリング社の入札を認めた件などであるが、係る原判決の判断は誤りである。
 控訴人らが主張したいのは、なぜ本件組合が、次々と常識では考えられない入札手続きを取ったのか、なぜエンジニアリング社を特別扱いし、優遇する扱いをとったのか、その背景としては本件組合がエンジニアリング社ないしエンバイロメント社との間で事前調整を重ねていたからに他ならないということである。
物質は、分子や原子のレベルまで、細分化すれば、却って、その原型が何だったのかが分からなくなる。裁判でも個々の事例は、大変重要であっても、そのつながりを分析することを欠けば、全体が見えなくなる。
もし自治体が、特定の企業への落札をあらかじめ考え、公正さを欠く優遇策を図り、入札手続きや落札手続きを空洞化させる実質随意契約を進めれば、その空洞化の痕跡から事実を掴むことができると考える。
そのため、控訴人らは、実質随意契約ではないかと控訴人らが考えた点として下記の4点について述べる。
その上で原判決の問題点を述べることにする。
① 廃業を通知したエンジニアリング社の応札を認めたこと
② 廃業するエンジニアリング社の入札を認めたのは、エンバイロンメント社の受注を認めたことと同義であること
③ 大規模改修工事を含む計画を委託契約として偽ったこと
④ 入札制限の狙いは、他の焼却炉メーカーの参入の排除であったこと

 (1)廃業を通知したエンジニアリング社の応札を認めたこと
    平成28年9月14日、エンジニアリング社は、本件組合に対し、翌年3月31日に消滅することを通知した。(甲-控訴―2号証)事業開始は翌年度であるから、エンジニアリング社は事業に従事することができない。そのため、当然エンジニアリング社は入札資格を有さないというべきである。
    ところが、この通知は、エンバイロメント社との合併により消滅するというものであった。このような場合、一般的には、消滅会社ではなく、存続会社が入札に参加する。しかし、本件ではエンジニアリング社が入札に参加を希望した。そのため、通知の趣旨は、入札に参加する資格があるかどうかを問い合わせたものであったと推認できる。ところが、本件組合が入札参加の可否を検討する期間すらないままに、翌日にはエンジニアリング社が入札参加申請書を提出し受理されている。
    本件組合は消滅会社が入札に参加しようというのであるから、存続会社であるエンバイロメント社について、最低限、①合併し存続会社になるのは事実か、②施工能力はあるのか、③入札制限等のペナルティを受けていないか、④本件事業を間違いなく継承するのかについて調査すべきである。なお、④については確約書、念書の類が必要になることは言うまでもない。いずれも行った形跡はなくまた、その時間的余裕は、物理的にもなかった。
    すでに述べたように通知の翌日にエンジニアリング社は、入札申請を行い受理されている。本件契約にあたっては、入札審査委員会が審査することになっていたが、訴外柳泉園組合の担当者は、エンジニアリング社が、2017年(平成29年)3月31日をもって、廃業するという極めて重大な情報について、入札審査会に知らせず、また訴外柳泉園組合の管理者会議も開催した様子はない。
そもそもエンジニアリング社が、廃業通知を行ったのが、9月14日付けの発信であり、(甲-控訴状―2号証)エンジニアリング社が、入札公告に対して応募したのが、9月15日である。時間的には、この手続きが、わずか一日の内に行われている。管理者会議など開き、検討することは、事実上不可能であった。
その上で、訴外柳泉園組合は、廃業するエンジニアリング社の応札受理をいとも簡単に行っている。
入札公告に書かれている本件契約の実施は、2017年度(平成29年)、つまり2017年4月1日以降であり、その時点で廃業しているエンジニアリング社の応札の受理など普通では考えられない。明らかに入札要項に書かれた条件、本件事業を受託するという一番基本的な条件を満たしていないからである。
もし、何らかの事情があって、本件組合として、廃業を宣言している会社の入札を特別に認めるのであれば、管理者会議でその取扱いの是非を議論すべきであった。またすでに入札審査委員会を発足させている以上委員会に報告し、取り扱いの是非を問うことが必要であった。
ところが本件組合の担当者は、そのどちらもせず、エンジニアリング社の応札を受理しているのである。
振り返って、この件では、8月30日付けでエンジニアリング社、エンバイロメント社の親会社にあたる住友重機械工業(株)からエンジニアリング社が、エンバイロメント社に吸収合併されるという通知が出されていた。(甲-控訴状―1号証)
しかし本件組合の担当者が、その件を知っていたとして、エンジニアリング社から応札があったのは、驚きであったはずである。
なぜ廃業が予定されているエンジニアリング社が、その廃業の翌日からはじまる本件長期包括事業に応札するのか?エンバイロメント社が応札すれば良かっただけではないかと。
本件組合という自治体が行う事業は、租税を基にした公共事業であり、だからこそ、一般競争入札の下で進めることが自治法で定められているのである。
競争入札の受付の事務が、入札資格のないエンジニアリング社の応札を受理したこと自体おかしくはないか。エンジニアリング社への落札、訴外エンバイロメント社への引き渡しをあらかじめ考えていたと言われて仕方がないと言える。
また書証(甲-控訴状―1号証)の合併当事社の概要(平成28年3月31日、控訴人注平成29年3月31日の間違いか?))によれば、エンバイロメント社は、事業内容として「環境衛生施設」の開発、設計、製造、販売、修理等の事業は行っていない。それに対してエンジニアリング社は、運転維持管理、関連機器・装置・部品・ソフトウエアの制作、取り付け、補修等を行うとしている。
つまり、エンジニアリング社は、この書証で見ると、環境衛生施設の事業を行い、その意味で本件組合の本件事業に応札できるが、エンバイロメント社は、応札が実質不可能であった。事業としてこの環境衛生施設の事業認可を取得するためには、国土交通省の認可が必要であった。そこでエンジニアリング社として、まず応札した上で、エンジニアリング社が落札し、その権限を継承してエンバイロメント社が契約を結ぶように企てた。事実経過を見るとそのように指摘することができる。
しかしこれは、合併という私企業内での出来事に合わせて、エンジニアリング社の入札行為をダミー行為とし、エンバイロメント社に実質契約権限を譲り渡すというものである。
これは、一般競争入札が、公平・公正に行われなければならない点から言うと、極めて論理、倫理に外れた行政の判断行為であったと言える。
結局のところ、事前に謀議して合意していたものを、形式だけ整えたことということは容易に推測することができる。このことから、あらかじめ契約者をエンジニアリング社(そしてエンバイロメント社)と定めていたことが強く推認される。この入札事業の開始時点(平成29年4月)には、廃業しているエンジニアリング社の入札手続きを善しとすること自体は、エンジニアリング社への特別扱い、優遇にほかならず、落札を予定した実質随意契約であったと言える。
 (2)廃業するエンジニアリング社の入札を認めたのは、エンバイロンメント社の受注を認めたことと同義であること
  本件組合は、廃業するエンジニアリング社を入札参加企業として認めたが、仮にエンジニアリング社が落札した時には、事業を推進することができたのか疑問である。
仮にエンバイロメント社に事前に相談していなければ、エンジニアリング社が落札した時には、企業合併による混乱のため、事業遂行に大きな穴をあけることになる。
    この件について原判決では、16ページ23行で「エンジニアリング社の本件入札の手続き、落札者としての地位は、吸収合併存続会社であるエンバイロメントに社に継承される」と記載している。
    この様に、原判決は会社法750条1項に基づき、合併存続会社は消滅会社の権利義務(債権・債務)を継承するから問題ないと述べるが、同項は存続会社が消滅会社の権利義務を承継するとするのみで、事業の継承を義務化したものではない。どの事業を継続するかは存続会社が決める権限を持っている。
  したがって本件組合は、事前にエンジニアリング社及びエンバイロメント社との間で、吸収合併後もエンバイロメント社が本件委託契約に係る業務を行うことについて了解を得ていたはずである。
  反対にそのような事前の了解を取っていなければ、法人として全く無責任であったことになる。この点も事前の謀議を強く推認させるものである。
 (3)大規模改修工事を含む計画を委託契約と偽ったこと
  本件は、大規模改修工事を含む計画であり、建設業法に基づき、請負契約として手続きを進める必要があった。また、本件組合では、1億5000万円以上の請負契約は、議会の議決案件である。しかし、本件長期包括契約は、請負契約として進めなければならないのに、全体として委託契約とて、取り扱われてきたため、入札手続きでは、設計図書や設計仕様書が示されず、工事の内容は受託業者に丸投げされた。
    係る本件組合の対応は、本件委託契約は請負契約として取り扱わなければならなかったのに、委託契約として手続きを進めたものであり、誤りである。さらに、条例に規定もしていなかった総合評価一般競争入札を取り入れ、建設事業者であった住重社系列で、価格以外の要素では本件組合において並ぶもののない実績を持つエンジニアリング社に落札を誘導した。実質的な随意契約以外の何物でもない。ちなみに、控訴人森が議員を務める西東京市では総合評価を条例に規定しているが、精度を高めるために、いまだ「試行」を重ねている。
  今回は本件組合が実質随意契約を、さも、公平公正な競争入札を行ったかのように取り繕うために総合評価を取り入れたものである。
    議会の議決を得たというが、委託契約ならば議会の議決を要件としていない。一方、請負契約であれば、本件組合が求める結果が設計図書その他建設業法で示された書類によって明示されていなければならない(同法632条)。本件経緯に照らすと、本件組合議会は具体的な工事内容を確定しないまま請負工事について決議したことになり、有効な議決ではない。
    まともな焼却炉メーカーであれば、大規模改修工事を含む長期包括契約を、委託契約とするような入札公告に手を上げることはないと言ってよい。
    この点でも本件委託契約は、他社参入を排除する建設業法に違反する違法な入札手続きだったと言え、まさしく実質随意契約だったと言える。
 (4)入札制限の狙いは、他の焼却炉メーカーの参入の排除であったこと
    大規模改修工事は建て替えに匹敵するほどの大掛かりな工事であり、焼却炉メーカーでなければ受注することが困難である。焼却炉内に充満するダイオキシンを含んだ飛灰の対策もしながら行わなければならない。日本における大手焼却炉メーカーは住重社他、東京都の指定業者など約9社が存在する。
    東京都の指定業者であった日立造船、タクマ、三菱重工業、日本鋼管、石川島播磨重工業などに比べると、住重社は新規参入企業であり、本件組合の焼却炉建設において、これら指定業者と熾烈な競争を経て、落札した経過があった。当然今回のような入札では、そのような大手企業の入札参加を意識したことが考えられる。
  しかし本件委託契約の入札参加資格は、本件組合での工事実績であった。結局、他の焼却炉メーカーは、参加することができなかった。
    エンバイロメント社が参加できる入札条件にすれば、他の焼却炉メーカーが応札してくるおそれがある。エンジニアリング社には施工能力はないが、本件施設における実績がある。そこでエンジニアリング社がエンバイロメント社に吸収合併されることを見越して、エンジニアリング社に有利な入札条件が定められたのである。したがって、本件委託契約は、あらかじめエンジニアリング社(エンバイロメント社)を契約者と定めていたものであり、実質随意契約であった。
(5)実質的に随意契約であったこと―まとめ
    原判決の個別の判断案件について、以下の誤りを指摘する。
  ア 本件入札手続の入札参加資格要件が、不必要であり、かつ、事実上の入札制限に当たるものであったこと
    原判決は、弁論の全趣旨に基づき「①に指摘された入札参加資格要件は、本件組合における競争入札への参加資格審査に所定の営業種目において登録されている旨の要件であるところ、これを満たす事業者は400社以上存在した」と認定するが、肝心な論点は、大手焼却炉メーカーの参入が排除されたという点にある。
    乙3の2の②の「本業務を行う者の参加資格条件として」「入札の公告日現在、組合において、建設工事、物品製造、役務提供等の登録があるものであること」との定めによって、一炉100トン規模の大規模改修工事を担うことのできる他の大手焼却炉メーカーを排除していたのであること。上記判示は、明らかに間違っている。
  イ 本件入札手続の入札参加資格要件は極めて門戸の狭い厳格なものであったこと
    原判決は、「現に、本件入札 手続にはエンジニアリング社の他にテスコ社も要件を満たす事業者として参加している点で、該当事業者を過度に限定させる要件であったとは直ちに認め難い」と指摘するが、
    参加資格要件における「実績」と、大規模改修工事を含む本件委託契約を委託契約として進めた間違いは、大手焼却炉メーカーが自ら退くような条件であり、その意味で、極めて門戸の狭い厳格なものであったことが言える。本件組合において参加資格要件を極めて厳しくする意図があったことは明らかである。
  ウ エンジニアリング社はテスコ社と比較して、エンジニ アリング社が圧倒的に優位な地位にいたこと
    原判決は、「本件入札手続以前のエンジニアリング社及びテスコ社の本件施設、本件施設の隣接施設又は本件組合との関わりに係る原告らの主張によれば、本件入札手続における非価格要素審査において、本件施設との関わりによるエンジニアリング社の経験等が、事業提案の作成に当たってエンジニアリング社に有利に働き得たことは否定し難いものの、それらが殊更にエンジニアリング社に有利に働いたとまで認めるに足りる証拠は見当たらない(例えば、証拠(乙5)によれば、本件入札手続における非価格要素審査において、テスコ社の評価が エンジニアリング社の評価を上回っている審査項目も複数存在したこと が認められる。)。」と判示した。
    しかし、乙5の11頁の非価格要素審査一覧によれば、テスコ社がエンジニアリング社を上回った項目は「運転管理業務」のうち「搬入管理」、「維持管理業務」のうち「点検・検査計画」、「情報管理業務」、「地域振興」という、本件委託契約に特徴的ではない汎用性の高い項目に限られる。反面、「運転管理業務」のうち「運転計画・管理」、「維持管理業務」のうち「補修計画(大規模補修含む)」といった、本件委託契約の根幹であり、かつ配点の高い項目についてエンジニアリング社がテスコ社を大きく上回っている。
しかし振り返って、総合評価一般競争入札において、エンジニアリング社が、テスコを上回ったという提案内容は、情報公開でも明らかにされていない。その意味ではこれらの採点も机上の空論である。
    以上によれば、個々の項目の性質に着目せず、単に評価が上回っているからエンジニアリング社がことさらに有利とまではいえないとする原判決の判断は誤りである。
提案の具体的な内容すら情報非開示にするなか中で、本件において、本件組合が、本件入札手続の落札者をエンジニアリング社又はエンバイロメント社とするために、同社らと事前に意思を通じていたことは明らかである。
  エ エンジニアリング社が吸収合併により消滅する予定であることが、 落札者をエンジニアリング社と決めていた本件組合にとって不都合な事 実であったこと
    原判決は、「本件入札手続の入札参加資格の定め(乙3)をみても、当該会社が吸収合併消滅会社となる吸収合併が、入札手続終了後、本件委託契約の締結までの間に予定されていることが、当該会社の入札参加資格に影響を及ぼすと解し得る定めは見当たらないことも踏まえれば、上記の答弁の内容が、不自然なものとは認め難い。」と判示する。
    しかし、約半年後に消滅する会社は、そもそもどのように参加資格条件をクリアーしていても、入札の資格がないことは、言うに待たない。乙3に「当該会社が吸収合併消滅会社となる吸収合併が、入札手続終了後、本件委託契約の締結までの間に予定されていることが、当該会社の入札参加資格に影響を及ぼすと解し得る定めは見当たらないこと」という判示内容は、「朝ご飯を食べた?」という問いに、「食べていない」と答え、「ごはんではなくパンを食べていた」というのと同じレベルの、全く非常識な判断であり、「朝ごはんを食べた人は、競技に参加することができる」と定めがあったとして、「彼は、朝食がパンだったから朝ごはんは食べていません」といういわゆる「ご飯論」のような話である。パンは、朝ご飯には入らないという「私」の勝手な屁理屈でしかない。
    通常この種の入札公告に際し、事業開始時に廃業している事業者は、当然応札しない。応札できないものと考える。したがって「事業開始時に廃業している事業者は、応札できません」などという規定の定めや、資格条件の記載は、書かないのが当たり前である。書かれていないからと言って、事業を引き受けることのできない事業者には応札資格がないと考えるのは、当たり前である。
朝ご飯を食べたと聞かれれば、たとえパンを食べていたとしても、「ハイ」と答えるのが、常識である。事業開始時に廃業が決まっている事業者を応札参加させるのは、朝ご飯は食べていない、パンを食べたという非常識の世界、もしくは落語の話を判決の中に持ち込むことになる。
    応札した以上、応札し審査を受ける事業者が、落札した時には事業を引き受けると考える。応札したが、事業は引き受けない、吸収合併される事業者に継承しますというのは、私の勝手な理屈でしかない。
    裁判での争点について、ご飯論の低レベルな話を持ち込むなと言いたい。またこの件に関して判示の「①報告することによって、どの会社が入札に参加しているかが分かってしまうこと、②親会社に吸収合併されることは組織として大きくなることを意味することから、公平性を保っためであった旨を答弁していること」という話は、司法試験の前に常識テストが必要なのではないかと考えてしまうほどひどい判示である。全く不当である。
    原判決は要するに、吸収合併により吸収合併の予定が参加資格要件に形式的には抵触しないこと、会社法の規定により吸収合併消滅会社(エンジニアリング社)の権利義務が吸収合併存続会社(エンバイロメント社)に包括的に承継されるので特段の問題は生じないとの認識ありきで上記判示に至ったものと思われる。
    まず事実認識として、エンバイロメント社とエンジニアリング社は、両方とも同じ住友重機械工業(株)を親会社とする兄弟会社である。しかも創立は、エンジニアリング社は、エンバイロメント社よりも早く、形から言うと子が親に吸収合併されるのではなく、兄が弟に吸収合併される形である。その意味で上記判示の内容は間違っている。また従業員数で言うとエンジニアリング社は、607名、エンバイロメント社は217名である。
    したがって「親会社に吸収合併され、組織として大きくなる」というのは事実と違っている。
    また、審査委員会に本件組合が聞かなければならなかったのは、事業開始時に廃業する事業者の入札を可とするのかであり、もし名前を出すことが審査に影響するというのならば、出さずに問いかければよかっただけである。
また名前を出してその事業規模が大きいことが、審査に影響するなどというのが「常識」であるとすれば、全く恥ずかしいことである。。審査委員会を馬鹿にする屁理屈でしかない。
    しかし、ここで問題となるのは、エンジニアリング社が合併により消滅することが判明したにもかかわらず、本件審査委員会の事務局が委員に対し、このことを報告しなかった理由である。
    この点について原判決は、上記のとおり論理不明の判示をしているものであるから、原判決は誤りである。
    入札に参加する予定の企業が消滅することを委員に報告しなかったことを釈明する正当な理由は成り立たない。報告しないことについて合理的説明をすることができていないことからすれば、エンジニアリング社が吸収合併により消滅する予定であることが、落札者をエンジニアリング社と決めていた本件組合にとって不都合な事実であったことは明らかであり、この事実は本件委託契約が実質的に随意契約であったことを推認させるものである。
  オ 本件入札手続は入札公告からやり直さなければならなかったにもかかわらず、本件組合は、消滅する直前のエンジニアリング社との間で仮契約を締結し、エンバイロメント社との間で本契約を締結したこと
    原判決は、「地方自治法は、競争入札における公告その他契約の締結の方法に関し必要な事項は政令で定めるものとしている(23 4条6項)ところ、これを受けて、同法施行令16 7条の6は、普通地方公共団体の長は、一般競争入札により契約を締結しようとするときは、入札に参加する者に必要な資格、入札の場所及び日時その他入札について必要な事項を公告しなければならず(1項)、この公告においては、入札に参加する者に必要な資格のない者のした入札及び入札に関する条件に違反した入札は無効とする旨を明らかにしておかなければならない(2項)旨を定めているが、その他に一般競争入札の公告の方法等について具体的に規定した法令の定めは見当たらない。そうすると、本件委託契約が請負契約の性質を含むものであったとしても、その一事をもって直ちに、本件入札公告に具体的な工事内容や当該工事内容に対応する請負金額が記載されなければならないと解すべき法令上の根拠はない」と判示する。
     しかし、本件で問題なのは、本件委託契約が、建設工事請負契約を含むことが明らかであるのに、建設業法に言う請負契約として取り扱わず、請負契約の諸手続きを一切考慮せずに委託契約として手続を進めてきたことである。入札公告の方法等について具体的な定めがないことをもって、この点が治癒されることなどおよそあり得ないことである。
     また、上記判示のうち、「具体的な工事内容や当該工事内容に対応する請負金額が記載されなければならない」の部分は、建設法上の要請であり(同法24条、19条1項等)、この点も、入札公告の方法等について具体的な定めがないからといって、その違反が治癒されることなどあり得ない。
    また、原判決は、本件入札公告、本件入札説明書、本件要求水準書等が本件組合のホームページで公表され、窓口での配布をしていたこと、これらの書類に大規模補修ないし修繕の項目が記載されていたことなどから、「本件事業に係る委託契約のうち焼却施設の大規模補修の委託に係る契約内容は、その計画(特定の機器の全部又は一部の補修(更新)及びその補修計画)の立案の委託をも含むものであり、本件入札手続においては、本件入札公告の段階から、その完成させるべき仕事の内容が特定され、それを前提に、エンジニアリング社及びテスコ社が作成した各事業提案の審査がされ、落札者が決定されたものと認められる。」と判示する。
    しかし、本件組合が、平成29年4月20日開催の平成29年第1回本件組合議会臨時会の直前まで本件委託契約に請負が含まれることを全く認識していなかった経過事実がある。この手続きかしによって、当時の本件組合の助役が処分を受けている。このことからすれば、入札手続において請負を念頭に置いた検討がされていなかったことは明らかであること、「本件事業に係る委託契約のうち焼却施設の大規模補修の委託に係る契約内容は、その計画(特定の機器の全部又は一部の補修(更新)及びその補修計画)の立案の委託をも含むもの」との上記判示部分は、工事の請負ではなく、本件長期包括事業を、まさに管理業務の一環としての委託契約について論じるものでしかない。むしろ入札手続において請負の要素が含まれていなかったことを強調するものであること、「完成させるべき仕事の内容」とは、「仕事」との文言を用いているものの、その実質は委託業務に過ぎないこと(「仕事」との文言を用いることで、委託業務と請負業務をすり替えていること)、からすれば、上記原判決の判断は全く不合理なものであり、誤りである。
    また、原判決の「本件入札公告を見た者において、本件入札説明書等を取得することにより当該契約内容を知ることに支障はなかった上、実際に、本件入札手続においては、当該契約内容に関する審査も実施されたこと等に照らせば、本件入札手続に地方自治法施行令167条の6の規定に反する違法があったとはいえず、その他、本件入札手続に、本件委託契約が請負契約の性質を含むものであったことを理由とする何らかの違法があったことはうかがわれない」との部分については、そもそも具体的な請負契約の内容が記載されていない本件入札説明書等を取得したところで、これを見た者が請負契約の正確な内容を知ることなどおよそ不可能であるから、この点についても原判決の判断は不合理であり、誤りである。
    さらに、原判決は「エンジニアリング社において、本件入札手続終了後、本件委託契約の締結前に、エンジニアリング社を吸収合併消滅会社とする吸収合併が予定されていたとしても、エンジニアリング社の本件入札手続の落札者としての地位は、吸収合併により、吸収合併存続会社であるエンバイロメント社に承継される(会社法750条1項)から、本件組合がエンバイロメント社との間で本件委託契約を締結することの支障となるものとは解し難い。」と判示する。
    しかし、企業が他企業を吸収合併した際に、吸収合併消滅会社の事業を全部引き継ぐとは限らないこと、吸収合併消滅会社の権利義務が吸収合併存続会社に包括的に承継されるとしても、従来は別企業であるものがひとつのまとまりを形成するという意味においてはグループ企業と類似する状況を生むところ、入札参加資格を定める乙3の2頁のグループ会社全体に実績要件を課していることからすると、少なくとも吸収合併存続会社であるエンバイロメント社において、同実績要件を満たす必要があったと解すべきであること(そうしなければ、例えば乙3記載の企業グループが実績要件を満たさない場合に、形式的に参加資格要件を満足している企業を吸収合併してしまえば、参加資格要件を得ることができてしまうが、このことが参加資格を定めた趣旨を没却することは明らかである。)からすれば、本件ではエンジニアリング社が吸収合併消滅会社となることが明らかになったときに、直ちに入札の見直しを検討すべきであった。このことは、特別な知識がなくとも判断可能なものであった筈である。
    しかし、本件組合は入札手続をやり直すことなく、エンジニアリング社との間で本件委託契約の仮契約を締結し(ただし、同仮契約は形式不備であり無効である。)、さらには吸収合併後、存続会社であるエンバイロメント社との間で本契約を締結することを強行した。
   本件組合がこのような強引な行動に出た理由は、あらかじめエンジニアリング社ないしエンバイロメント社との間で、本件委託契約の落札者を同企業らとすることについて意思の疎通があったからに他ならない。よって、この点に関する原判決の判断も誤りである。

 5 本件委託契約の契約額が過大であること
 (1)大規模改修工事の必要性の検査を欠いた法令違反
    原判決は、そもそも、原告の主張を取り違えている。原告は一般論として大規模改修工事の必要性は無いと言っているのではない。廃棄物処理法で言う精密機能検査(廃掃法施行規則第5条)を行ったうえで、大規模改修工事の必要性の判断をすべきだったと言っている。
    ところが、原判決は、乙11号証の記載内容を一面的に捉える点で誤っている。
    すなわち、原判決は、乙11の記載により、「①定期点検に係る補修等を行うにとどまる場合には、稼働後12、13年を超えた辺りで施設全体の性能水準が急速に低下するようになり15年以上を経過すると老朽化が顕著となる。」「②設備の更新を含む延命化対策をせず、 稼働年数が30年ないし35年程度に及んだ場合は、点検補修費は、稼働年数15年以降、・・・・増加を続けることが認められる。」との事実認定をしている。
    しかし、これは、あくまでも一般論でしかない。
    焼却炉は、製造メーカーやその立地条件、そして運転管理の経緯などによって、当然耐用年数は、異なってくる。実際の焼却炉の耐用年数を見ると、環境省が、調査したデータから作成したのが甲第16号証の資料である(甲16)。かなりばらつきがあるとはいえ、15年で廃止するような事例は、全体の5分の1に満たない。やはり30年以上使い続ける事例も同様に全体の5分の1となっている。また都市部の清掃工場の焼却炉で言えば、東京都区内の場合は、全て25年以上~30年となっている(甲17)。
    したがって、本件事例のように、わずか15年経過しただけの焼却炉を、精密検査も行わず、大規模改修工事に入るのは問題だと控訴人らは主張している。
    原判決は、控訴人らが「①焼却炉は、毎年のメンテナンスが適切に行われている場合、大規模補修工事を行わなくても30年程度使用し続けることが可能とされている」旨の主張を行っているとし、その上で、大規模補修工事を行わない場合には、焼却施設を「使用し続けること」自体は可能であったとしても、著しい性能水準の低下や点検補修費の増加は避け難いものと認められるから、本件施設につき本件委託契約に係る大規模補修工事の必要性がなかった・・・とはいい難い。」と見てきたように判決を述べている。
    しかし、耐用年数が15年と30年とでは、建設費のコストから言うと倍の違いが出る。「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないとする」地方自治法2条13項や、「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない」とする地方財政法4条1項の規定から、自治体が、検査もせず事業者任せで工事を計画して進めることは、財源の無駄遣いとなるばかりでなく違法である。
    環境省の見解は、先に示した一般論の上に、「このように設備の更新を行う時期は、施設全体の点検補修費に与える影響は大きいので、更新を行う種類と範囲の決定は、非常に重要である」(乙11の13頁)と示し、実際にはそれぞれの焼却炉の状況を点検し、調査することを求めている。当然の指示と言ってよい。よって、一般論をのみ根拠とした原判決は誤りである。
 (2)焼却量の観点から大規模改修工事の対象施設は減らすことができること
    本件、長期包括運営管理事業では、ごみの今後の予測量、ごみの焼却量は、15年間にわたりほぼ変わらない、という予測の上に大規模改修工事の計画が立てられている。
    ところが、構成市では、有料化等を実施し、ごみの減量化を進めている。また不燃ごみとして構成市が収集したごみを、本件組合に運んできたあとで、不法に不燃ごみを可燃ごみとしている事実がある。こうした点を考えた時、今後ごみの焼却量は、大幅に減り、本件組合で必要とされる焼却炉を3炉から2炉に減らすことができる。そうすれば計画費用も削減されるという控訴人らの主張に対しては、原判決は次のように判断している。
     ① 不燃ごみを、本件組合で燃やしても、最終埋め立て処分量が減るため、構成市の経済的負担の面で助かる。
     ② 焼却炉を3炉から2炉に変えれば、年末年始にごみがあふれる。
 ①について、原判決では、「不燃ごみから可燃分を選別しないこととした場合においては、・・・最終処分場への埋立量が増加することとなり、・・・構成3市の負担金が増加することになる」「したがって、不燃ごみから可燃分を選別し焼却処理することは、上記負担金の増加を防止する意味を有する・・本件委託契約において、・・・不燃ごみとして収集されたごみのうち可燃分を、本件組合が・・・焼却処理することが、直ちに合理性を欠くとは認められない。」と判示している。
 この点について構成自治体は、住民の負託に応えて行政を行っている。ごみに関して言えば、住民はごみの処理について、単にコストが安ければいいと考えているわけではない。構成市では環境に関する住民の意識が高く、市は住民意識に沿った施策を行い、その実施に当たって住民に協力をお願いしている。各市とも住民に廃棄物を13とか、14とかの種別に分別してもらって処理をしている。
 不燃ごみもその一つで、住民は市の求めに応じてプラスチックを燃やせないごみに分類して排出している。プラスチックは石油生成物であるから燃やせば燃える。しかし、燃やさないことを求めて分別して排出しているのである。
 しかるに、本件組合では、持ち込まれた不燃ごみの約8割を焼却し、可燃物の量を増大させている。ちなみに、裁判所が「不燃ごみから可燃分を選別しないこととした場合・・・最終処分場への埋め立て量が増加」し「負担金が増加する」と指摘している(20頁8行目以下~)が、政策を決めるのは裁判所ではない。
 また、可燃物とされなかったプラスチックについて、本件組合はガス化溶融という処理を行い、そもそも埋め立ててはいない。コストが安くなるからと言って、住民の環境要望に従った処理をするべき行政にとって、燃やすことに合理性はない。行政が住民要望を踏まえて行う施策の中で最大限効率のいい財政運営をすることを求めるのが自治法2条13項や地財法4条1項の趣旨である。
    大規模補修工事の必要性は、構成3市の住民の生活環境が維持されることを前提として検討されるべきものである。
    そして、係る前提に立った場合、不燃ごみを焼却しない分、焼却量は減少するため、現状の3炉稼働(通常稼働の2炉及び予備の1炉)体制を変え、1炉を全く使わない稼働・補修計画ができる。
    なお、原判決は「証拠(乙7ないし10)によれば、構成3市及び本件組合がそれぞれ作成した一般廃棄物処理基本計画(乙7ないし10。 廃棄物処理法6条に規定する一般廃棄物処理計画に当たるもの)において、不燃ごみ(又は燃やせないごみ)のうち選別された可燃分は焼却処理される旨が定められ、この点について、構成3市が作成した各一般廃棄物処理基本計画と本件組合が作成した一般廃棄物処理基本計画との間でそごはないことが認められるから、この点からみても、 本件委託契約において、構成3市において不燃ごみとして収集されたごみのうち可燃分を、本件組合が本件施設において焼却処理することを前提とすることに問題点は存在しない。」と判示する。
    しかし、少なくとも西東京市においては、「不燃ごみ(燃えないごみ)」ではなく「燃やさないごみ(言葉通り、燃やしてはならないごみ)」と区別している。基本計画に記載している「可燃分」は、不燃ごみに混入してくる紙ごみなどの「可燃分」については、燃やしてよいということであり、「不燃ごみ」として分別しているプラスチックなどを燃やすことが可能だから燃やしてよいということではない。控訴人らは後者のごみが本件施設で焼却されていることを問題視するものであるから(原審原告準備書面(4)11頁参照)、原判決の判断は前提に誤りがある。
    さらに、原判決は「本件施設の焼却炉1炉の1日当たりの焼却処理可能量がおおむね100tであり、1炉当たりの年間焼却処理可能量は、補修のための停止期間を年に69日(大規模補修及び定期点検整備補修のための停止期間55日及び3炉共通部分の点検整備補修のための停止期間14日)とみた場合には、2万9600t (1日当たりの焼却処理可能量100tに、年間稼働日数296日(365日-69日)を乗じたもの)と計算されることが認められる。」とするが、そもそも停止期間を年69日と見ること自体の根拠が不明であるうえに(乙3には17頁で「焼却施設の年間運転日数は、搬入される廃棄物を滞りなく処理することを条件とすること」との定めがされているだけであり、補修のために停止を要する具体的な期間に関する記載がない)、毎年行われるわけではない大規模修繕の期間を含める点でも不合理である。
    したがって、「これらに加え、(a)構成3市において、処理すべき可燃ごみが毎年漸減する旨の上記①の想定を顕著に超える可燃ごみ減量化の取組みが実現し、」以下の部分は、前提となる数字に誤りがあるため、不当である。なお、原判決は、年末年始期間におけるごみの増加を指摘するが、本件施設においては、約8000立方メートル、約4000t(2炉の1日の焼却量の20日分)のごみを貯蓄できる施設が設置されていることから、当該事情は控訴人らの主張を否定する理由とならない。
 (3)本件委託契約における予定価格は、事実上落札企業が変更したこと
    原判決では、固定費Aと固定費Bの価格は、予定価格である点を認識していないが、誤りである。固定費Aと固定費Bの合算額より入札価格が低いことが求められたとすれば、当然この合算額は入札予定価格となる。
    そして逆に言えば、その内訳が固定費A及び固定費Bとして定められているのであれば、それぞれの固定費A及び固定費B以下に抑えた入札価格でなければ落札ができないとするのは当然である。
    そして、実際の経過を見ると、落札企業であるエンジニアリング社が、固定費Aより高い価格で応札し、固定費Bよりははるかに安く応札している。一審では、総額を見て、エンジニアリング社が行った試算より15億円以上下回っていることを持って、その応札価格は有効であるとし、「エンバイロメント社の利益となるものとは言えない」と判示している。しかし合理性を欠いた判断である。
    通常、入札において固定費Aのように、予定価格を上回った時には、もちろん失格となる。一方固定費Bのように、大幅に下回っても失格にはならないが、本件の場合、予定価格を算定して提出していたのがエンジニアリング社であり、なぜそのように低額で提出することができたのかに議会でも質問が出た。
    ところが工法を変えたから低額でできたという答弁が返ってきた。見積もり段階では高い積算をし、入札にあたってはより安い方法で応札するというのは、まるで出来レースのようである。
    そもそもの問題は、本件での引用において本件長期包括運営管理事業の契約を、「本件委託契約の委託費に係る固定費A及び固定費B」と原判決が表現しているように、委託契約としてとらえていることである。本件組合は、本件委託契約を確かに当初委託契約として取り扱ったが、固定費Bなど大規模改修工事を含んでいたため、平成29年4月の段階で請負契約として取り扱うことに変更したのである。
    したがって、本来は、その段階で委託契約として競争入札していた当初の誤りを改め、請負契約として進める必要があった。改めていれば、設計図書と施工仕様書を提示し、工事の内容を示すことができていた。そうなれば応札者が勝手に工事内容を変更し、値段も左右するということなどできなかったのである。
    次に、予定価格を上回った場合には、直ちに失格となる。別のところでサービスするからといったところでその結論は変わらない。総合評価方式だからと言って、求める以上のサービスを提供するからと固定費Aの金額を吊り上げ、大規模改修にかかる費用固定費Bを減額してその帳尻を合わせるなど異常というしかない。ここから言えることは、むしろ25億円以上も減額できたことからして、大規模改修の必要性は決して高くなかったということである。
    このように見た時、 原判決の「そもそも、本件委託契約の委託費に係る固定費A及び固定費Bの総額をみれば・・・ 15億8294万9943円削減されており、エンバイロメント社の利益となるものとはいえない」との判断は不合理である。また固定費A及び固定費Bについて、「証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば、本件全員協議会資料における上記の数字は、本件入札手続に先立ち作成された試算の金額にすぎない」という釈明を認めているが、固定費A、固定費Bは、予定価格ではなかったのか。予定価格を用意しない入札など談合でしかない。
    以上によれば、原判決の上記判示は誤りである。
 6 本件委託契約の債務負担行為の財源の根拠がないこと
   この点についても裁判所は被控訴人の主張をそのまま引用するかのような判断をしている。
   本件組合規約14条に定められている負担金は毎年度定められる。しかし、本件組合においては、エンバイロメント社と15年の長期に渡る契約を結び、それゆえに、大きく割り引いてもらったと報告してきた。
   契約事業者からすれば、本件組合が将来の支払いを約束し、その保障として債務負担行為を設定することが、将来の得るべき利益への補償となる。この将来の負担については、本件組合は徴税権を持たず、構成市の分担金で収入確保していることから、自ら支払える金額ではない。
   地方公共団体は毎年度予算を編成しなければならない(地方自治法215条)。また、同法214条では「歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。」旨定め、将来負担は予算に計上しなければならないことになっている。
   本件組合が、自らだけが債務負担行為を設定するだけでよいと考えたのは失当である。本件組合の将来負担、債務負担行為が構成各市の義務となるためには構成市はその分の債務負担行為を設定しなければならず、これを怠ることは地方自治法214条、215条に違反する。
   また「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。」(地方財政法2条1項)とされており、本件組合が構成市の許可なく債務負担行為を設定したのは、構成市の法律違反を誘発すると同時に「他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策」であり、地方財政法2条1項に明確に違反し無効である。
原判決は、本件組合の経費は負担金として構成3市が負担すべきものであり、その性質は地方自治法177条1項1号の義務費にあたるとしたうえで、「本件組合の議会の議員は、構成3市の議会の議員から選出されており、本件組合の管理者及び副管理者は、構成3市の市長が務めているものと認められる(本件組合規約5条2項、6条、9条1項、2項参照)。そして、本件組合の管理者及び副管理者をもって構成される本件組合管理者会議は、本件組合の議会に提案すべき議案に関することや、本件組合の運営に係る基本的事項に関することを審議することとされている(本件組合管理者会議運営規程(平成11年本件組合訓令第11号。乙16) 2条、3条)。」「以上に認定及び説示したところを踏まえれば、本件委託契約が、本件組合が複数年度にわたって委託費の支払をすることを内容とするものであることを踏まえても、その締結時において、委託費の支払に対応する本件組合の収入の確保等に特段の支障があったとは認め難い。」と判示する。
   要するに、原判決は構成市の議員や市長が本件組合議会に関与しており、その上で本件組合の意思決定がされているのだから、本件組合と構成3市が負担金の支出について異なる立場を採ることがないことを根拠に、構成3市の財源確保等に特段の支障はないと結論づけているものと考えられる。
   しかしながら、本件組合が複数年度にわたる将来支出について債務負担行為を設定したとしても、単年度主義の原則に基づき、当該年度ごとに予算を組み、これを承認しなければ、構成3市は毎年の負担金を支払うことができない。本件組合が債務負担行為を設定した後に、構成3市の市長や市議会の構成が変わることは当然に予想され、市議会も市長も負担金の支出を否定することが当然にあり得ることであるから、上記原判決の理由付けは成り立たない。
   また、原判決は、「地方自治法214条の定める債務負担行為は、新たに債務を負担する行為を対象とするものであるところ、上記のとおり、構成3市は、本件組合が本件委託契約の委託費を支払うことに起因する負担について、義務費である負担金の形でこれを負う」と判示する。
   原判決は、本件組合規約14条により、本件組合の経費は、構成3市の負担金を始めとする本件組合の収入により支弁されること(1項)、本件委託契約より前に構成3市が負担金を支払うこととされていることから、委託費を負担金の形により支払うことは新たな債務の負担にあたらないと理解しているものと考えられる。
   しかしながら、単年度会計主義である本件組合の構成市にあっては、負担金の支払い義務は構成市と認められる当該年度限りのものであるから、債務負担行為を設定しない限り、将来年度の支払い義務はない。負担金と名が付きさえすれば債務負担行為を要しないと解することは相当ではない。本件委託契約の金額及び期間に照らせば、本件において構成3市においても債務負担行為を設定しておく必要があったというべきである。
 7 廃棄物処理法違反があること
   原判決は「廃棄物処理法6条1項は、市町村は、一般廃棄物処理計画を定めなければならない旨を定めているにとどまり、一部事務組合である本件組合は、その策定の義務を負う主体とは直ちに解されないから、本件組合が作成した一般廃棄物処理基本計画の内容等を捉え、本件委託契約の締結について同項等への違反を論ずる原告らの前記アの主張は、失当である。」と判示する。
   しかし、本件組合は特別地方公共団体としての一部事務組合であり、地方自治法上、原則として普通地方公共団体に関する規定が準用される(地方自治法292条)。
   その趣旨は、特別地方公共団体も地方公共団体であるから、その性質に反しない限りにおいて普通地方公共団体と同等に扱うことが相当と考えるべき点にあるところ、廃棄物処理法6条1項の適用について、普通地方公共団体である市町村と、特別地方公共団体である一部事務組合を別異に解する理由はないから、同項の「市町村」には本件組合が含まれるものというべきである。
   また、原判決は「不燃ごみ(又は燃やせないごみ)のうち選別された可燃分は焼却処理される旨が定められている点について、構成3市が作成した各一般廃棄物処理基本計画と本件組合が作成した 般廃棄物処理基本計画との間でそごは」ないと判示する。
   しかし、これが誤りであることは、前記5の(2)で述べたとおりである。
 8 本件仮契約の締結につき議会の議決を経ていないこと等
   原判決は「地方自治法96条1項5号、本件条例2条の文言上、本件組合の議会の議決の対象とされているのは契約の締結であることは明らかであるところ、これを仮契約の締結にまで及ぼすと解すべき法令上の根拠は見当たらず、かつ、その必要性も認め難い。」と判示する。
   しかし、控訴人らが問題にするのは、仮契約書の不存在であるから、上記判示は当を得ないものである。
   また、原判決は「本件委託契約事務規則55条1項は、管理者は、本件条例の規定により議会の議決を必要とする契約については、議会の議決を得たときに本契約が成立する旨を記載した契約書により、仮契約を締結しなければならない旨を定めており、確かに、本件承諾書等の授受により行われた本件仮契約の締結は、議会の議決を得たときに本契約が成立する旨の内容となっていない点及び契約書の作成がない点で、同項の定めと異なる点があるといわざるを得ない。」としながらも、結論としては「本件委託契約事務規則55条1項の趣旨及び目的は、契約の締結について議会の議決を得るに当たりその内容を書面により明確化するとともに、議会の議決を得た場合には速やかに当該契約の効力を発生させようとした点にあると解される。」としたうえで「上記に判示した同項の趣旨及び目的にもとる点はなかったということができる。」「そうすると,本件仮契約の締結の態様について,本件委託契約事務規則55条1項の定めと異なる点があることが,本件仮契約又は本件委託契約を私法上無効としなければならないような重大な瑕疵であるとは認められない。」と判示した。
   しかし、契約の締結は本件組合の内部のみに関するものではなく、対外的な法律行為であること、本件委託契約事務規則55条1項にあえて「仮契約書」との方式が明記されていることからすれば、同項の趣旨及び目的には、仮契約書を作成することにより、議会の議決以前に契約の相手方との間で議案が可決されたときには仮契約書記載の契約を締結するとの意思を明確に確認することによって、構成3市に不測の損害を及ぼさないようにすることも含まれているものと解するべきである。
   以上によると、仮契約を仮契約書により締結することには重大な意義があるのだから、これを軽視する原判決は不当である。
 9 小括
   以上のとおり、原判決の判示は不当であるから、取り消されるべきである。

第3 原判決がもたらす不都合について
   これまで、本件契約が実質随意契約であったことについて述べてきた。ここからは、原判決が判例として残ったならば、自治体の現場、行政実務にいかに混乱をもたらすかを述べる。
   原判決が先例となれば、自治体現場で未曽有の混乱が生じる。
   本件は、市町村の一般廃棄物、いわゆる一般ごみを焼却等中間処理する一部事務組合での焼却炉の大規模改修工事を含む15年間にわたる長期包括運営管理契約に関するものである。控訴人らは、この一部事務組合である本件組合で一般ごみを処理する構成市の住民である。
   前記の第1ないし第2で詳述したように、本件委託契約を進めてきた本件組合の管理者は、以下のような問題ある行政事務を行ってきた。
    ① 本件委託契約は請負契約として取り扱う必要があるのに、当初委託契約として進めてきたこと
    ② 入札に当たり応札したエンジニアリング社は、本件事業開始時には、廃業していることが分っていたのに入札に参加させる等、最初にエンジニアリング社への落札ありきの入札手続きが行われたこと
    ③ 本件施設は、稼働からまだ15年余でしかなく、基幹部分の取り換えを行う大規模改修工事が必要だったのかとの疑問があったこと
    ④ 財務処理の上でも、後年度の負担を会計処理するにあたり、本件組合としては、債務負担行為の手続きを取ったものの、その会計処理を保証する構成市では、債務負担行為を実施していないという問題があったこと
    ⑤ ごみ量の今後の予測に大きく関係する本件組合での不燃ごみの焼却処理が見つかったこと
   いずれも地方自治体が、法令を遵守してその事務を進めることが求められていることから言って、大問題となる事柄であるが、原判決は、自治体での事務の実情を無視して、一審判決を下したのである。
   原判決が独り歩きすれば、自治体現場で未曽有の混乱を生じることになる。その点を危惧して、どのような問題が生じるのかを下記にまとめ、控訴理由の一つとする。

 1 建設業法に違背する委託契約
   焼却施設大規模補修工事は建設業法における建設工事である。
   建設業法第24条では、委託その他いかなる名義をもってするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的とする契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律を適用するとある。したがって、本件の大規模改修工事は、請負契約として進めなければならなかった。
   また建設業法の第19条には請負契約の当事者は、次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は押印して相互に交付しなければならないとあり、その1として工事内容、2として請負代金額等とある。
   ここでいう工事内容とは、設計図書や設計仕様書のことを言う。このことは、中央建設業審議会決定「公共工事標準請負契約約款」にも、「発注者及び受注者は、この約款(契約書を含む。以下同じ。)に基づき、設計図書(別冊の図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(この約款及び設計図書を内容とする工事の請負契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。」と総則に書かれている。
   行政、民間の発注を問わず、発注者は、あらかじめこの設計図書や仕様書を用意した上で、入札にかける。行政職員は多くの場合事務職であり、したがって建設工事にあたって設計図書や仕様書を作るに際し、専門の技術士などに頼み、それを入札公告時に示し募集するのである。
   請負工事において、設計図書や仕様書を用意せず、入札公告すれば、本件のように設計仕様を変えた内容が、応札者から提案されるといったおかしなことになる。
   本件で原判決は、大規模改修工事は委託契約で行なって差し支えないかのような判断をした。これは建設業法第24条に明らかに違反している。
   仮にもしこの原判決が、先例として独り歩きすれば、本件組合が取った違法な手続き処理をチェックできないだけでなく、自治体における建設工事の発注が、委託契約で良いという事になり、もたらす混乱と損失は甚大なものになる。

 2 廃業する企業の入札参加を是とする先例
   これまで、公平な入札の実施について、様々な試行錯誤と努力が行われてきた。本件の経過を見ると、廃業する企業をいわばダミーとして、それが吸収合併される会社を本命として契約させる不法な仕組みを、原判決は容認した。これでは実質随意契約を進める自治体の腐敗は留まるところがなくなってしまう。
   行政は入札にあたって、地方自治法の定めに従って、一般競争入札を旨として行っている。十分な施工能力を持っている企業が落札することを求めて指名競争入札を取り入れたり、制限付き一般競争入札を採用したりしてきたが、談合やダンピングに悩まされてきた歴史がある。景気の後退局面では官製談合なども起った。プロポーザルという方法も試されたが、随意契約にあたると、排斥された。
   このように、行政は入札、契約にあたっては苦労して試行錯誤を繰り返してきている。現在は総合評価一般競争入札が流行している。しかし、第2で詳細を見てきたように、この方法は、行政と企業が謀議、協議をして実質的な随意契約に利用することができることがはっきりしている。本件のような悪用を許してはならない。
   本件入札の場合、合併存続会社が入札に参加するのではなく、消滅会社が参加していることに問題点が表れている。発注側の行政が、存続会社ですら参加できない条件を付ければ、有力他社を排除し、応札企業を絞り込むことができる。その上に総合評価一般競争入札で、当該企業の優越的能力に高得点を配置すれば、ほぼ思い通りに落札企業を特定することができる。この消滅する企業に施工能力がなくても、存続会社が吸収してしまえば、事業遂行は可能である。落札し契約したのちに存続企業の傘下に入れば、存続会社に契約を移し替えることができると考えたものである。
   原判決は会社法750条の1によって消滅会社の権利義務が存続会社に継承されるから差し支えないとした。これで、入札制限を受けて、本来入札も契約も不適当な企業ですら契約を結ぶことができることになる。ペナルティですら意味をなさなくなってしまう。
   上記のスキームは、行政と企業が事前に協議、謀議を行わなければ成立しない。だが、このようなことができる、ということが重要なのである。法的に問題が指摘されないとなると行政は「やる」ものである。たとえば、物品調達の場合、目的の機種の最も特徴的な機能をとらえて「同機能と同等の機能を持つ物」と書き込めば、その機種を導入することができるのである。
   原判決が今回の契約を適法と判断するならば、悪しき前例を作り、これまで積み上げられてきた、不正入札防止の流れに大穴をあけてしまうことは疑いを入れない。

 3 検査すら行わず大規模改修工事が大手を振ってできるようになる
   大規模改修に関して、原判決が老朽化の判断を、具体性のない一般論の推測のみで判断しても構わないとし、時期、内容の決定を業者にゆだねることができるとしたことにより、今後このような「丸投げ」が横行することが想定される。
   原判決は、本件組合が施設の現状を調査することなく、業者との間で契約時からおおむね10年の間に大規模改修することを契約した行為を是認した。
   施設の耐用度は使用状況によって大きく左右され、すぐにも更新が必要になるかも知れない反面、相当長期にわたり改修の必要がないこともありうる。「最小の経費で最大の効果」を求めるならば、仮にも施工業者に、時期、程度の判断を丸投げしてはならない。
   しかしながら、原判決が委託契約の中に工事契約を紛れ込ませた今回の契約を是認したことによって、これを前例にして、設計会社を使った入札前の費用積算、設計図書の作成、工事の監理、完了後の監査等々のわずかな費用削減をするために、工事を委託契約として行うことに道を開いてしまった。これはもちろん建設業法違反であるが、おそらくそのことを知りながら、良からぬ首長たちは、本件組合に前例、実績があるとささやきながら違法工事を進めることになる。巨額の損失を生む判決と言わなければならない。
 4 構成市の分担金の裏付けのない事務組合の債務負担行為
   原判決は、一部事務組合が債務負担行為を設定すれば、構成市が自動的にその支払いの義務を負うものと誤認し、構成市での債務負担行為を必要がないものとして、一部事務組合の野放図な長期契約に道を開いた。
   将来、構成市の脱退等で負担金の確保に失敗したとたんに、負担金に頼る一部事務組合が財政破綻に陥ることは明らかである。一部事務組合の財政破綻は残された構成市の財政を直撃する。構成市は債務負担行為を行っておらず、支払いの保証を約束していないから当然の帰結である。
   債務負担行為は将来の支出を定めたものであり、地方自治法214条では「歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。」と定められ、将来負担は予算に計上しなければならないことになっている。さらに同法215条では、「予算は次の各号に掲げる事項に関する定めからなるものとする1歳入歳出予算、2継続費、3繰越明許費、4債務負担行為、5地方債、6一時借入金、7歳出予算の各項の経費の金額の流用」と定められており、本件組合の将来負担、債務負担行為が構成各市の義務となるためには構成市はその分の債務負担行為を設定しなければならない。そうしなければ構成市自身が自治法違反に問われることになる。
   「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。」(地方財政法2条1項)に違反する。本件組合の契約行為が是認されるならば、一部事務組合の財政規律は崩れ、構成市の財政に悪影響を及ぼすことが危惧される。
 5 構成市が分別収集した不燃ごみを一部事務組合では、焼却してよいという原判決
   原判決は、構成市の市民が、各市の廃棄物処理基本計画に定められた基準に基づき不燃物として分別し排出したごみを焼却することに一定の合理性があるとした。それによって、一部事務組合は構成市の施策の枠を超えて独り歩きしてもいいことにしてしまった。
   本件組合は構成市から搬入されたごみ等を中間処理している組織である。構成市が要請し、且つその一般廃棄物処理基本計画に基づき処理を行わなければならない。構成市が市民に分別排出をお願いしている不燃ごみはがれき等のほか、①容器包装以外のプラスチック、②汚れた容器包装プラスチックが含まれている。プラスチックは石油製品であり、燃やせば当然燃える。しかしあえて不燃ごみとして収集している。これは市民の要求による「施策」である。たとえば西東京市は、かつて「容器包装リサイクル法に対応するまでの間、軟質系プラスチックは焼却する」と表明した。軟質系プラスチックとはフィルム状の容器包装プラスチックで、容器包装リサイクル法に対応した現在では、不燃物中の汚れた容器包装プラスチックとして残っている。そのほかの不燃ごみ中のプラスチックは、そのもの自体が商品である製品プラスチックであり、各構成市の基本計画に従って不燃ごみとして収集されている。本件組合が不燃ごみを焼却することは構成市に法律違反を強要すると同時に、市民に嘘をつくことを強要するものであり、一部事務組合の範を超えて地方自治法や地方財政法に違反するものである。
   本件判決が、廃棄物の処理に関連して定められた法令を破ってよいとする、環境省もびっくりする判示を示したことに驚く。裁判官である前に、ごみの分別や収集等を手伝う一人の国民であれ、そう言いたくなるひどい判断である。

第4 控訴人阿部ら6名による第二次監査請求の適法性について
   原判決は、控訴人阿部ら6名による第二次監査請求の適法性について、却下する旨を判示しているが、第2次監査請求は、その他の控訴人を含めて控訴しているため、本件の控訴は有効として、各争点の論述を進めてきた。以下、この件について詳述する

 1 原判決の判断
  原判決は、①最高裁昭和62年判決によれば、控訴人阿部ら6名は本件組合が平成28年11月4日当時に締結しようとしている本件事業に係る契約、すなわち、後の本件委託契約を対象として第一次監査請求をし、同年12月28日頃、監査委員から第一次監査請求を棄却する旨の監査の結果の通知を受けていたこと、②本件経緯によれば、遅くとも平成29年12月8日の第1事件の取下げまでの間に、第1事件において訴えの変更により第2事件に係る訴えと同様の訴えを追加することが困難であったことをうかがわせる事情が見当たらないことから、第1事件に係る各訴え提起のときに第2事件に係る各訴えも提起されたものと同視して出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるということはできないことから、控訴人阿部ら6名の第二次監査請求が不適法であり、第2事件につき原告適格を欠くものと判断した(原判決第3第1項・7頁~10頁)。

 2 原判決が誤りであること
 (1) 理由①について
    この点に関する控訴人らの主張は、原審原告ら(控訴人ら)準備書面(9)第1第1項(1頁~3頁)で述べたことと同じである。
    原判決は、係る控訴人らの主張について、「住民監査請求の制度は、住民訴訟の前置手続として、まず当該普通地方公共団体(一部事務組合も同じ。地方自治法292条。以下同じ。)の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は当該事実の違法、不当を当該普通公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とするものであると解されるところ、住民訴訟は、監査請求の対象とした違法な行為又は怠る事実についてこれを提起すべきものとされているのであって(同法242条の2第1項)、当該行為又は当該怠る事実について監査請求を経た以上、訴訟において監査請求の理由として主張した事由以外の違法事由を主張することは何ら禁止されていないと解される(現に、原告阿部ら1名は、第1事件に係る各訴えを提起し、第二次監査請求において主張した違法事由(別紙3第2の(原告らの主張)の1(1)ウ、同6(1)に記載したもの等。甲12)を含む主張をしている。)から、仮に、第一次監査請求に係る監査委員の監査の態様が原告らの上記主張するとおりのものであったとしても、上記判断を揺るがすに足りる事情とはいえない。」と判断した(原判決8頁、9頁)。
    しかし、原判決の指摘する上記監査請求の目的は、結局のところ、当該地方公共団体の住民(一部事務組合にあっては、構成市の住民)の利益保護を終局的な目的にするものであるというべきである。
    そのため、住民の監査請求ないし住民訴訟の機会は極力保護されるべきであるところ、原審で主張したとおり、少なくとも本件では第一次監査請求の段階では、本件委託契約が請負を含む等の極めて重要な事実について、全く検討がされていなかった(監査委員も含め、気付いてもいなかった)。この点に関する監査の機会が得られなかったことは、本件において極めて重要な問題である。
    それにもかかわらず、形式的に本件委託契約について第一次監査請求を経ており、その後の第1事件の住民訴訟において本件委託契約が請負を含むこと等に関する主張をしたことをもって、控訴人阿部ら6名の第二次監査請求を不適法とすることは、上記控訴人らが主張する住民監査請求の目的に明らかに反するものである。
    よって、上記原判決の判断は誤りである。
 (2) 理由②について
    原判決は、「本件委託契約が締結されたのは平成29年4月28日であり、第2事件に係る各訴えが提起されたのは平成30年5月8日であったところ(前提事実(2)ク、(3)イ(ウ))、①原告阿部ら4名は、遅くとも平成29年4月17日までには第1事件について訴訟代理人弁護士を選任したこと、②同代理人が、同年6月20日、第1事件に係る答弁書を受領し、同月30日に実施された第1事件に係る第1回口頭弁論期日において、第1事件に係る答弁書が陳述されたことにより、原告阿部ら4名は、遅くとも同日には、本件委託契約が既に締結されたことを知ったこと、③原告阿部ら4名は、第1事件に係る各訴えのうち本件事業に係る委託契約(本件委託契約)の締結の差止めを求める部分につき、同代理人を通じ、同期日において、訴えの利益の有無を踏まえて対応を検討する旨の方針を明らかにするとともに、同年10月31日に実施された第1事件に係る第3回口頭弁論期日において、取り下げることを検討している旨を明らかにしたこと、④原告阿部ら4名は、同年12月8日、第1事件に係る各訴えのうち上記の部分を取り下げるとともに、同日に実施された第1事件に係る第4回口頭弁論期日において、その余の部分につき請求を変更したことの各事実は、いずれも当裁判所に顕著である。そして、本件全証拠によっても、原告阿部ら4名において、遅くとも同日までの間に、第1事件において、訴えの変更により第2事件に係る訴えと同様の訴えを追加することが困難であったことをうかがわせる事情等は見当たらない。」として、「原告阿部ら4名の第2事件に係る各訴えについて、第1事件に係る各訴えの提起の時に第2事件に係る各訴えも提起されたものと同視して出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるということはできない。」と判断した(原判決9頁、10頁)。
    しかしながら、控訴人らは原審において、当初は専ら構成市における財源の確保なしに本件委託契約を締結することや、大規模改修工事の必要性等を問題にしており、平成29年12月8日の第4回口頭弁論期日における第1事件に係る訴えの一部取下げないし訴えの変更を行った時点では、本件委託契約が入札手続を欠くものであることや、実質的に随意契約であったことなど、本件において重要な部分となる主張はしていなかった(控訴人らがこれらの問題点に気付いたのは、早くとも平成30年2月14日付原審原告ら準備書面(4)を陳述したころである。)。
    したがって、「原告阿部ら4名において、遅くとも同日までの間に、第1事件において、訴えの変更により第2事件に係る訴えと同様の訴えを追加することが困難であったことをうかがわせる事情等は見当たらない。」とする原判決の判断は誤りである。

第5 結語
   以上のとおり、原判決は誤りであるから、取消しのうえ、控訴人らの請求は認容されるべきである。
以上
証拠方法

1 甲第14号証   ・・・

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント