柳泉園組合・水銀汚染事故 質問書&要望書の提出報告


柳泉園組合・水銀汚染事故 質問書&要望書の提出報告 

  2015年11月14日 NPO法人ごみ問題5市連絡会  青木泰

柳泉園組合への「質問&要望書」の提出を11月10日予定通りに行いました。提出は、グリーンランド自治会長や工業団地・恩親会の環境担当、西東京市森てるお市議や清瀬市布施由女市議他構成3市市民、東村山市の市民など8名が参加して行いました。賛同いただいた方ありがとうございます。11月8日までに賛同いただいた方の分は、添付のように提出しました。引き続き、第2次分、11月22日締め切り、24日提出分のご検討をお願いいたします。(その後も考えています)

あらかじめ柳泉園組合に「質問&要望書」の内容を伝えていたため、実際の提出に当たって、検討していた内容を柳泉園組合の担当者から話してもらい、それに沿って話し合いを続けました。(13時~15時)

この要望書提出に当たり、朝日と毎日の記者も参加し、翌日の朝刊で添付のような報道を行っていただきました。これまで東京新聞だけが伝えていた水銀汚染問題が、ようやく主要メディアも報道し、かなり問題が注目されることになりました。

1 自主規制値が設けられました。
今回の柳泉園組合の返答で最大の特徴は、柳泉園組合が、ヨーロッパ並みの排ガス規制に基ずく、自主規制値を設けたことを発表したことです。これは要望書の3)に記載されていたことで、私たちの要望にこたえた形になっています。

プラスチックごみを焼却しないルールの下でごみを焼却している清掃工場において、水銀測定器を取り付け、自主規制値によってチェックする体制を作ったのは、(現状の調査の範囲では)柳泉園組合が日本で初めてです。

柳泉園組合のような清掃工場では、プラスチックごみを燃やすことになっていないため、水銀測定器を設け、自主規制値を設ける意味は、何らかの理由でルールが破られ、水銀汚染ガスが、規制値以上に煙突から排出されることがあれば、それをキャッチして、直ちに焼却炉の稼働を止め、汚染の拡大を防ぐようにするということです。

その意味では、今回のような事故が起きた後では、当たり前の措置です(注1)が、自主規制値を設けたのは、下記に示すような日本の環境行政の後進性を考えたとき、画期的なことです。
(ただ2時間連続というおかしな条件が付加されており、その点を後で検証します。)

これまで日本では、排ガス中の重金属については、産業施設への規制はあったものの、ごみの清掃工場には、規制がありませんでした。放射性物質への排ガス規制がないのも、これまで重金属の排ガス規制がない延長上にあります。

一方そうした中で、東京23区清掃1部事務組合や横浜市、名古屋市の巨大政令指定都市には、水銀計測器は取り付けられ、自主規制値を設けていました。

さらに三多摩地区では、ふじみ衛生組合(三鷹市と調布市が構成市)でも、建設稼働時(2013年)から水銀測定器が設置され、自主規制値が設けられています。ここでは容リ法による分別リサイクルを行う一方で、製品プラスチック廃棄物は、「プラごみ」として回収し、焼却しているそうです。

そのせいもあってか「初年度4回、次年度も数回」(同衛生組合N議員談)の水銀汚染事故を起こしています。

2 その他の質問&要望への回答
 質問、要望事項の下記に示した1)、4)、6)については、その他の大半は、「予算措置が必要なためもう少し検討させてほしい。」という答弁がなされました。

1)原因追及のための第3者委員会の設置
4)周辺大気中に放出された水銀の影響を調査するために、土壌の汚染調査を
6)周辺環境や住民の健康を考えない今回の対応を反省し、ダイオキシンの連続測定装置の設置を。

この回答を受けて、現段階の柳泉園組合に考え方を聞きたいと求めましたが、4)の土壌調査について、「たとえ検出されてもそれがいつのものかは判別できないため、意味がないのでは」という追加答弁がなされました。

これに対して、柳泉園組合周辺土壌の重金属の汚染については過去に市民団体が、柳泉園組合の煙突を中心にして、鉛、カドミ、ヒ素の3種類について、50か所の調査をしたことがある。この重金属の分布方向と年間風配(この地域の年間の風の方向―気象庁データ保管)を分析し、柳泉園組合の煙突から分排出されたと推定したことがある。(注2)費用もダイオキシンのようにはかからないと話し、その時の資料を提供するので、調査に取り組むよう求めました。

また1)の第3者委員会の設置については、今回の水銀汚染事故は、柳泉園組合の有害ごみの管理保管場所から運ばれて、焼却炉に投入された可能性もあり、その場合職員の関与も問題になる。柳泉園組合の内部調査だけでは、原因追及ができない。実際民間廃棄物業者なら必ず人材配置しなければならない有害物の取り扱いの管理責任者さえ配置されず、責任所在が明らかでない。

6)のダイオキシン連続測定については、現状は年1回の調査でよいことになっていている。焼却炉は、燃焼の立ち上げ、立下げがあり、その時にはダイオキシンが大量に排出される。柳泉園組合の場合、焼却炉の運転記録を見ると、3炉がかわるがわる稼働していて、その都度燃焼の立ち上げ、立下げが起きる。そうした時のダイオキシン量をもれなく測るためには、連続測定器の導入が必要だ。
といった意見が参加者から出されました。

有害物の管理責任者を配置する件については、佐藤技術課長からは、有害物の処理施設でないため、必要がないという発言が、返ってきましたが、少なくとも有害ごみの保管管理を行っているわけで、やはり必要ではないかと反論しました。

その外、2)の周辺自治会や東村山市への連絡が遅れたことへの釈明については、なぜ遅れたかの理由は説明されず、今後そのようなことがないようにしたいと発言したにとどまりました。

 また5)の今回の水銀事故発生を教訓にし、他所でも起こる可能性を考え、三多摩の他の自治体に、水銀測定器の取り付けを訴えてほしいという点については、回答として柳泉園組合の権限外という返答がありました。

3)今回の事故の再発防止に向かい合う柳泉園組合の姿勢
その外、今回の事故への柳泉園組合の対応姿勢や今後の対策についていくつか具体的な提案が行われました。

Q:「本来焼却炉に混入してはいけない有害ごみが、持ち込まれていた訳であり、もし柳泉園組合のいうように業者によるものだとすれば、今後の防止策という意味で、何らかのペナルティを課す対策が必要ではないか。」
Q:「水俣病の影響は、今も残り、次世代3世代にわたっている。水銀汚染の影響防止は真剣に取り組んでもらいたい」

A:柳泉園組合の場合、大気汚染防止法の関係でも、硫黄酸化物、窒素酸化物などの規制値は、国の規制の10倍厳しい規制を行っていて、国の規制基準に任せる対応をとっていない。

Q:国の基準の問題だけでなく、柳泉園組合が何もない野原の中に立地している訳でなく、周辺に住宅密集している点を考えて、搬入に当たっての検査体制を年4回から月1回に変えればよいということで済むのかを考えてもらいたい。

 以上論点の中で最大の問題は、やはり今回の事故の原因が何かということです。柳泉園組合は、今回の水銀事故の原因を「善からぬ業者」による水銀血圧計などの不法投棄によるものとしています。しかし排ガス中の水銀量から逆算すると、300g位の水銀を含有した廃棄物が捨てられていたことになり、30g前後の水銀血圧計が原因とする説明では、計算が合いません。

もっと大量の水銀含有廃棄物を想定しないと原因には行き着きません。そこで疑われるのは、柳泉園組合の中に、有害ごみの集積保管場所があり、そこには年間100トン前後(電池90トン、蛍光管30トン)月単位で10トン近くの有害ごみが取り扱われ、その中には、300g前後の水銀が混入しているという事実です。その有害ごみが、焼却炉に運ばれて今回の事故が起きた疑いを解明する必要があります。

4) 自主規制値を設けたが、この運用ではチェックできない!!
 この話し合いと並行して進めていた情報開示請求(東久留米市川井満氏請求)によって、次の重大なことが分かりました。

 自主規制値は、EUの規制値【0・05mg/m3N】を使うことが発表されていますが、この自主規制値に基づき、「1時間平均値が自己規制値を2時間連続して超えた場合、その焼却炉を停止することにする」というマニュアルにすると運用方法が報告されていたのです。

 1時間でチェックする方法と、2時間でチェックする方法では、天と地ほどの違いがあります。普通に考えて、2時間にすると規制値は、2倍に緩められることになります。(小学校の算数の問題です)

 しかも2時間ともそれぞれ平均して自主規制値を超えていることが条件になりますから、実際はほとんど規制値を設けたことにならなくなります。
また最初の1時間で、規制オーバしていることを発見し、例えば活性炭を大量に投入すれば、2時間目は激減し、水銀濃度を減らし、規制値越えをクリアーすることもできます。インチキな自主規制ということができます。

実際今回の情報開示請求で入手したデータをみると、2015年6月11日の1号炉のデータで、19時に「0・04mg/m3N」を計測しています。EUの規制値ギリギリの数値です。ところがこの時には次の20時の記録では「0.01」に下がっています。この時の「活性炭供給量」の数量をみると下記の表のとおりです。

  表1:柳泉園組合の1号炉の6月11日のデータ

           活性炭の供給量(kg) 水銀の排出ガス濃度
0時から15時まで  1.3~1.5         0.00
16時        1.4             0.00
17時        1.4             0.00
18時        2.6             0.00
19時        4.1             0.04
20時        4.0             0.01
21時        4.0             0.00
22時        4.0             0.00
23時        3.1             0.00

となっています。
ところで、水銀の計測器は、刻々変化する水銀データを読み取ることができるとともに、1時間ごとの測定データ(廃ガス濃度)を記録するようにしています。
表1に書かれている「水銀の排出ガス濃度」は、この1時間の平均値です。

そこで、この表1から読み取れることは、18時の時点で、現場の作業者が、水銀発生量が増加する何らかの予兆をキャッチし、その抑制のために活性炭の供給量を通常の1.4kg前後から約2倍の「2.6kg」に増やしています。

「0・04mg/m3N」を記録した19時には、すでに大幅に増加した数値を測定器から目視していたため、活性炭の供給量を従来の3倍の「4.1kg」にしています。その“努力”のおかげで、落ち着いたデータが、「0・04mg/m3N」と言えます。

20時以降も通常より増加した活性炭を供給し続けています。その結果もあってか20時には水銀の濃度は「0・01mg/m3N」に減っています。
     
水銀汚染を煙突を通して大気中に放出しないという意味では、もちろんこうした活性炭供給による排ガス中の水銀の低減策は必要ですが、しかし何が原因でこのようなことが起きたのかを点検するために、焼却炉を止めて焼却残さなどの点検調査が必要です。そうでないと水銀汚染事故は、隠されてしまうことになります。住民が知らないまま汚染ガスが排出し続けることになります。

2時間、続いてEUの規制値を超えなければ、焼却炉を止めないということでは、ほとんどチェック体制が成り立たないということになります。

 柳泉園組合の説明では、東京23区清掃一部事務組合の運用基準に合わせたもので、そこと同じだというのです。

早速23区の同組合の担当責任者に聞いてみると、微妙に違っていました。責任者の話では、最初の1時間で、規制値を超えを見る原則に違いがなく、次の2時間目というのは、高濃度の水銀濃度続いているか、それとも「0」になっているのかを見るだけだというのです。

「0」になっていれば止めなくともよいと判断するというのです。2時間連続で規制値を超えなければチェックしないということではありませんでした。

しかしこの23区同組合の判断は、担当者が違えば、「2時間連続で規制値を越えた時」という間違った運用基準で解釈されかねません。実際に柳泉園組合にはそのように伝わっていました。

測定器は刻一刻水銀濃度を検出し、その1時間の平均が、記録紙に記録される形になっています。したがって水銀の異常値を検出した時には、一刻も早く
焼却炉を止めて、環境中への放出をするために、規制値を越えた時には直ちに止める態勢に入るとすべきです。(注3)
 
注1:柳泉園組合では、水銀測定器を、現在の焼却炉建設時(2000年)に取り付けていましたが、そのことを公表せず、これまでHP上もデータの発表は行ってきていませんでした。今設置されている測定器については、最近の3年間をかけて、3基ある焼却炉に1台づつ設置しています。

排ガス中の水銀(濃度)測定器を設置した時には、環境対策として、自主規制値は設ける必要がありました。ところが、一台700万円(3台で合計2100万円)もする水銀測定器を取り付けながら、「何のために」取り付けるかという予算稟議書すら作らず、今もなぜ設置していたかについては、「当時の記録がない」とはっきりさせていません。

国や自治体の行政機関は、予算の伴う事業については、議会確認事項になりますが、これまで「何のため」も「自主規制値」もない、個人商店のようなやり方が行われていたのです。

注2:「プラスチックごみは燃やしてよいのか」(リサイクル文化社・青木泰著)の「高濃度の重金属汚染―プラスチック焼却の禁止」参照

注3:月刊誌「紙の爆弾」12月号に「『国際水銀条約』批准の建前と実態―都内ごみ清掃工場から周辺住宅地に―水銀有毒ガスが放出」参照

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