柳泉園組合における水銀汚染事故について レジュメ   2015年10月22日

柳泉園組合における水銀汚染事故について レジュメ

  2015年10月22日 NPO法人ごみ問題5市連絡会  青木泰

ごみ清掃工場で水銀有毒ガスを周辺住宅地に放出!焼却炉の停止や住民への通報も後回し。―国際水銀条約「水銀に関する水俣条約」の締結国とし、批准を進める環境行政の建前と違いすぎる実態ー旧態依然の原因隠しと責任逃れ

1)水銀汚染事故―事実経過(概要)
・柳泉園組合(清瀬市、東久留米市、西東京市)の清掃工場において9月1日、水銀有毒ガスを周辺住宅地に放出する汚染事故が発生した。(注1)
・1号炉では設置されていた水銀測定器でヨーロッパにおける規制基準(0.05mg/Nm3/h)の約3倍である異常値(0.14mg/Nm3/h)を観測し、1号炉を停止した。(注2)(注3)
<詳細経過>
9月1日 9:00 異常値計測
    その後 計測器 OFF 理由は、正常に作動していたかの確認
    16:00 焼却炉の停止に。清瀬市、東久留米市に連絡
    16:30 測定値(0.07mg/Nm3/h)
9月2日 0:00 測定値(0.07mg/Nm3/h)
     1:00 測定値(0.04mg/Nm3/h)
     2:00 測定値(0mg/Nm3/h)
    10:00 1号炉停止完了
    午前    西東京市連絡
    午後    周辺自治会 連絡
<柳泉園組合による原因説明>
「3市が柳泉園組合に運ぶ行政収集される『可燃ごみ』の中に、大量の水銀を含む廃棄物の混入は考えられず、事業者が運んできたごみの中に水銀血圧計等が、不法投棄された結果と考える」

2)水銀汚染の問題―水銀に関する水俣条約― 
水銀は4大公害の一つである水俣病で、工場排水として流され、魚介類を汚染した有機水銀だけでなく、焼却などによって排出される金属水銀、無機水銀とも有毒性が確認され、中枢神経系や腎臓に影響を与え、精神障害や記憶障害、言語障害をもたらし、動物実験では生殖・発生毒をもたらすことが分かっている。
2009年国連環境計画の提案を受け、「水銀及び水銀化合物による人為的な排出及び放出から人の健康と環境を保護すること」を目的に、「水銀に関する水俣条約」が2013年に90か国によって日本も含め締結され、批准を経て、2016年に正式発効される予定。そして水銀の削減、廃絶、保管に向かう。
EUではごみ焼却炉での排ガス規制も現に行われ、水銀条約が締結されれば、EUや米国は、一足先に輸出入の禁止を行うことを発表している。

3)柳泉園組合の原因説明「水銀血圧計の不法投入」の矛盾
事故によって放出された水銀量を計算すると水銀血圧計が間違って1台混入したという説明では、辻褄が合わない。下記検討すると責任逃れ論と言える。
<構成3市の分別の実態と柳泉園組合での処理>
構成3市では、各家庭で「可燃ごみ」「不燃ごみ」「有害ごみ」「容器包装プラ」他各種資源ごみに分けてごみを出し、焼却炉を持つ柳泉園組合には、「可燃ごみ」だけでなく、「不燃ごみ」「有害ごみ」も運ばれてきている。
(「容器包装プラ」は、柳泉園組合の隣の民間施設に搬送し、初期処理。)
「不燃ごみ」は、まず破砕処理し、木質部分、プラスチック、金属、電池などに分け、木質部分は、可燃ごみとして焼却炉で焼却し、プラスチックは他所の固形燃料施設に送り、金属類は、資源売却し、陶磁器やガラス類は文字通り不燃ごみとして、日の出の処分場に運び込まれる。
この際不燃ごみとして出されたプラスチック製品の電動式のおもちゃや小型家電などの駆動用の電池は、外国製で水銀混入量が多いものもあり、破砕によって、こぼれ落ちたものを磁力選別機によって集め「有害ごみ」に加えられる。
「有害ごみ」は、ドラム缶や蛍光管の収集ボックスに保管した後、北海道のイトムカにある野村興産の水銀処理施設に送っていた。
一方事業系のごみの取り扱いについては、不燃ごみは、取り扱いをせず、可燃のみを取り扱っていた。
<水銀含有量についての基本知識>
家庭から出される電池や体温計、蛍光灯などの水銀混入量は、旧式のボタン型電池で重量の1%、水銀体温計で1g、蛍光灯は100本で1gにしかならず、間違って混入しても、今回のような大量の有毒ガスが発生しない。
一方医師が旧来使用していた水銀血圧計は、これらの数十倍の水銀を含んでいるが、現在はほとんど使われず、大量に廃棄されることは考えられない。
<煙突から流出した水銀量>
水銀計測計は、焼却炉の排ガスが流れる煙突の入り口で採取し測定する。測定された時間当たりの「水銀量」と「排ガス流量」そして焼却炉を停止するまでの時間(7時間)をかけると煙突から排出された水銀量が計算でき、17gとなった。
計算は
0.14+0・07(mg/Nm3/h)×23,000(ⅿ3)
×7h=17、000mg=17g
<投入された水銀量>
柳泉園組合の説明:水銀排ガスはバグフィルターで95%除去でき、投入量の20分の1に削減される。その想定では、17gの20倍にあたる340gが焼却炉に投入されたことになる。
<業者が水銀血圧計を不法投棄した論の矛盾>
一方水銀血圧計の水銀混入量は、約30g位である。(野村興産の話)
340gの投入量で考えると、水銀血圧計が10台投入されたことになる。バグフィルターでの除去能力が、実際は70~80%位だったとしても、6~8台が投入されたことになり、事業者が間違って捨てたという説明は成り立たない。
では、事業者による水銀血圧計の不法投棄でなければ、だれがどのように大量の水銀混入廃棄物を焼却炉に投入したのか?そのような水銀は、何処から運ばれてきたのか?

4)これまでの水銀汚染事故
<東京23区清掃一部事務組合(以下「23区清掃1組」)>
23区清掃1組では、2010年6月から今日まですでに13回もの水銀汚染事故を起こしている。同年7月、事故を受けて、東京新聞では「都内4清掃工場―水銀で5焼却炉停止―先月中旬から東京都内の複数の清掃工場に多量の水銀を含むごみが持ち込まれ、焼却による有毒ガスの発生で焼却炉が相次いで停止。」と報道した。
この時には、同23区清掃一組では、「事業者が不正に有害ごみを排出した可能性があり、廃棄物処理法違反の疑いで警視庁に刑事告発することを検討している」と発表し、事業者の不法投棄のせいにしたが、原因追及がうやむやのまま、今日まで汚染事故を13回も続けている。
一方市民団体が、水銀汚染検証市民実行委員会を作り、専門家を含む学習会や講演を重ね1年後に報告書としてまとめた。(*4)
報告書では、23区清掃一組は、当時これまで不燃ごみとして東京臨海埋め立場に埋め立て処分していたプラスチックごみを、可燃ごみとして焼却する区が半数近くになった。プラスチックの製品ごみには、電池類が混入したまま捨てられているため、プラスチックの焼却に伴い水銀汚染事故が頻発したと指摘した。
23区清掃一組は、水銀汚染事故の原因を事業者のせいと発表していたが、ごみを収集する各区自治体の現場では、この報告書に基づき、これまで不十分だった有害ごみの収集に力を入れ、分別を徹底させる事故対策をとっていた。
原因は、事業者のせいとしながら、対策は全くちぐはぐになっていた。
<多摩川衛生組合>
多摩川衛生組合では、同組合が、組織的に有害ごみとして集めた水銀混入ごみをその処理費の軽減を図るために、焼却炉で焼却処理していた。ここでは市民の協力によって、プラスチックは、「不燃ごみ」として分別し、有害ごみを別個に収集する態勢をとり、焼却するごみに有害ごみが混入しない努力を官民でとっていたが、行政自ら定めたルールを破っていた。
その結果、水銀有毒ガスの周辺居住地への放出が行われ、この件では管理者が責任を取り辞職し、焼却灰を運び込む日の出の広域圏事務組合から焼却灰の受け取り拒否の対応を受けた。
5)本当の原因は?
有害ごみの量は、柳泉園組合では、2014年の実績で約100トンになり、その内電池類は、約70トンの計算になるという。野村興産の話では、有害ごみとして届けられる電池に含まれる水銀量は、1トンあたり約30~40gという。その計算で言うとからイトムカに送られる水銀量は、年間2~3kgの量になる。月当たりで約250から300グラムくらいになる。
今回の水銀汚染事故があった時に、柳泉園組合の敷地内には、投入された推計される水銀量に匹敵する有害ごみが取り扱われていた。したがってまず最初に報告しなければならなかったのは、その事実と管理が瑕疵なく行われていたかについてであった。
6)まとめ
今回の水銀事故(事件?)に関連し、第三者を含む専門家が参加する原因調査委員会のを作り、事故原因及び、再発防止策を考えることが必要。
また水銀計測計を設置しながら、設置したこと自体この事故が起きるまで明らかにせず、これまでの測定データも明らかにしていない、この点についての釈明を。

注1:西東京市、清瀬市、東久留米市の3市で構成するごみの焼却等を担う特別地方自治体―清掃一部事務組合―管理者は、並木克己東久留米市長
注2:ごみ焼却炉は、3基とも日量105トン処理能力。排ガス流量は、1時間で23,000m3(立法メートル)
注3:3市の人口は合計で、約38万人弱。柳泉園組合は、東久留米市と東村山市の市境にあるが、東村山市の人口は、約16万人
注4:環境総合研究所、環境行政改革フォーラム:http://www.eforum.jp/waste/Mercury-report1.pdf

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