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zoom RSS がれき広域化問題―東海・関西連続弾劾講演会―で見えてきたこと 青木泰

<<   作成日時 : 2012/04/08 21:07   >>

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―連続講演会報告その1―

がれき広域化問題―東海・関西連続弾劾講演会―で見えてきたこと

        2012年2月23日 環境ジャーナリスト 青木泰
 

 2月11日、東京、横浜から出発して、静岡(島田市、浜松市)、名古屋、京都、大阪、神戸そして小田原(2月18日)とがれき問題の連続講演会を行い、いくつか見えてきたことを報告したい。


1) 潮目の転換―「がれきの受け入れ=復興支援」の幻想の崩壊

 がれきの広域化による受け入れ無くして、復興支援は始まらない。国と大マスメディアによる合作の世論が、1月末から2月にかけて、潮目を迎え、大きく変わり始めた。

 今年1月静岡市の島田市の講演会の後の座談会で、がれき受け入れを表明した市長の下で、がれきの受け入れに反対することのむずかしさが住民から話された。被災地の復興支援に反対するのかという世論の包囲網の中で、たとえそれが燃やしたり埋め立てたりして安全かという真面目な問いかけでさえ、意見を出しにくいという話だった。この点は、神奈川県の最終処分場のある横須賀市の芦名周辺でも同様の話を聞いた。

 東京都の石原知事は、昨年末のがれき受け入れ表明をおこない、放射能汚染がれきの受け入れを心配する3000件に上る市民の声に、「黙れ」と居丈高に言い放った。がれき受け入れが、復興支援の道であるという世論を支えにした発言だったということができる。

 しかし仙台市は、がれきの処理について地元自前で処理の目途付け(*1)陸前高田市は、地元にがれきの処理プラントを建設しようとしたが、岩手県からストップをかけられ、断念していたことが分かった。(*2:浮島さとし<フリーライター>戸羽市長インタビュー)

 国や環境省は、放射能汚染がれきは、福島県に限られるとしたうえで、宮城県、岩手県両県のがれきは、全国化で処理する方針を定めていたことが分かった。その方針は、汚染が宮城、岩手県にも広がっていたことが分かった上でなお修正されることはなかった。(*3:「空気と食べ物の放射能汚染」<リサイクル文化社2012年1月25日発売>青木泰著)

 環境省が、地元自前でのがれきの処理を進めることに、ストップをかけ、それががれきの処理を遅らせていたこと、そしてその尻拭いをさせようとするのが、がれきの全国自治体への広域化処理であることを私自身も1月以降の講演会や今回の弾劾講演会で訴えてきた。

 東京新聞では、このがれき問題について、連続的に取り上げた。

@ 安全性の最大の根拠であったバグフィルターで99.99%除去できる根拠がなかった。(*4)2012年1月21日
A 島田市の受け入れの問題点 2012年2月2日
B 広域化の問題―環境総合研究所池田こみち副所長インタビュー2012年2月15日(*5)

 こうした中で、北九州市では、釜石市から受け入れるという方針が、実質撤回され、大阪府でも北部地域の7つの市が「受け入れない」を表明し、「受け入れの検討」は、大阪市だけとなった。(*6:毎日新聞2月2日)その大阪市も海面埋め立て場への埋め立てが、安全に行えるかの環境省の評価を待つという対応である。

 そうした中で2月17日、神奈川県黒岩知事の受け入れ撤回が発表された。(*7)
その前2月14日には、環境省に対しての法令上の不備についての質問も出していた。(*8)

 明らかに受け入れ拡大へと向かう潮目が転換したとえる。



2) 「汚染地域」神奈川県の受け入れ断念の画期的意味

 今回、福島第1原発からの放射性物質が大量に降り落ちた東日本エリアにある東京、神奈川の「汚染地域」から「非汚染地域」である愛知、京都、大阪と足を伸ばすことによって、見えてきたことがある。(そのような分け方で見ると静岡は、伊豆地域を除きほぼ「非汚染地域に入る」)

 環境省は、当初がれきが汚染されていることが明らかな福島県のがれきは、全国に運んでも、受け入れられないと考えていたため、宮城県、岩手県のものだけ、全国に運ぶとしていた。しかしこの両県も汚染されていると分かった上で、持ち出してきた理屈が、東日本各地は、すでに汚染されていて、福島より北側(宮城、岩手)は、南側の関東各県より汚染度が低い。すでに草木ごみは生活ごみとして焼却され、汚泥も燃やされている。したがって、両県のがれきを燃やしても汚染レベルは今以上に上がらないという理屈である。

 しかしその理屈でいえば、当然「非汚染地域」に持って行って焼却するのは、放射能汚染からの防御原則から言って成り立たない。実際に東大の森口祐一教授は、「汚染地域」へのがれきの持ち込みは、容認する姿勢を見せながら、神奈川以西の「非汚染地域」への持ち込みは、反対している。

 ところが、神奈川県は、「汚染地域」であるにもかかわらず、受け入れを断念した。

 神奈川県は、横浜市、川崎市、相模原市の政令指定都市3市で、受けれたがれきを焼却し、その焼却灰は、横須賀市にある芦名の最終処分場に埋め立てるという計画を立てた。神奈川県のがれき受け入れ問題は、当初から最終処分場の芦名で受け入れが認められるかが最大のポイントであると見られていた。その意味もあって神奈川県は、県内の3箇所での説明会の第1回目を芦名の地元で行った。今年1月の県による3回の説明会にもかかわらず、県の説明は筋の通ったものとならず、芦名周辺の大楠連合町内会は、反対声明を出した。この声明に対し、一部には反対は地域エゴであり、被災地の復興支援の足を引っ張るかの的外れな声も聞こえてきた。

 弾劾講演ツアー最初の横浜の集会は、13団体の共催で、横浜市の井上さくら市議、横須賀市の滝川君枝前市議、東京大田区の奈須りえ区議が参加する講演シンポジウムとして成功裏に実現し、横須賀の芦名周辺の連合会の反対声明に支持表明を行っていった。

 集会は、勇気ある反対声明を支援する神奈川県下の声を集め、がれきの受け入れこそが、環境破壊や住民の健康や命を脅かすことを示した。

 連合会の反対表明は、横須賀市の反対も引き出し、国を後ろ盾にした県の意志をも変えることができた。

 次の課題は、東京などとも共通している「汚染地域」での放射能汚染廃棄物(草木ごみや汚泥)の焼却による放射能汚染の2次拡散が問題となる。


 
3) 島田市長のスタンドプレーと裏にあった環境省の交付金事業

 静岡の島田市の受け入れ表明は、2つの点で東京や神奈川と違っていた。第1番目は、受け入れ検討のニュースが流れた途端、九州のお茶屋さんから静岡茶の取引拒否が伝えられた。静岡はお茶だけでなく、イチゴやミカンが主要産業である。がれきの受け入れがこれら農業生産に与える負の影響は計り知れない。第2番目に、島田市は、がれきを運び出そうとしている宮城や岩手県の放射能汚染濃度より平均的に見て汚染されていない地域に当たるということである。(汚染のレベルが低いと言っても、子供の尿からセシウムが検出されたという報告もあり、がれきの高温溶融炉での焼却は住民に大きな不安材料となっている。)

 ここでは汚染の拡散ということが、文字通り問題となり、島田市が受け入れを決めれば、中部から関西にかけてがれきが運び込まれることに繋がり、日本全国を放射能汚染列島にされかねないのである。

 そして島田市の桜井市長は、産廃業者であり、受け入れには業者としての利害も指摘されている。公益性の見えない受け入れ表明に、市民や農業事業者から反対の声が上がっている。

 がれき問題の実態をつぶさに見て行くと、大田区の奈須りえ区議の調査報告にあるように、岩手県の場合、広域化処理を計画しているのが、岩手県全体のがれき量〈435万トン〉の1割強(57万トン)でしかない。9割近い量は地元処理を予定している。がれきの処理が進んでいないのは、全国の受け入れがないためでなく、復興予算がらみの予算が決まるのが遅れ、それまで処理を放置していたからである。(*9:市民から見た「災害廃棄物広域処理」の論点)

 昨年すぐ決めなければならなかった被災地の特区計画は、中央各省庁の利害調整のため、遅れに遅れ、今年2月まで延ばされた。

 そうした中で、なんと環境省は、がれき受け入れの市町村に交付金までつけようとしていたことが分かった。(*10:月刊廃棄物2012年1月号「乗り越えよう環境行政最大の課題」)

 がれき処理は、被災地の復興支援のためと言いながら、がれきの処理を引き受けた自治体には、交付金の掴み金を与えるというのである。焼却炉の補修やごみ発電、その他なんでもお使いくださいというのだ。

 環境省のごみ焼却炉への交付金は、温暖化問題を受けて、ごみ発電の付加施設に限って支給されるようになったが、交付金の率を従来の1/4から1/3に変えても手を上げる自治体が少なく、さらに1/2と増やした。

 それでも後年度負担を考えて人気が出ず、昨年度からは新設に限らず、延命化工事にも交付金を出すようにしていたが、全国の自治体は余分な金を出す財政的な余裕がなく、交付金の予算が使い切れない状態になっていた。予算が執行されなければ、焼却炉メーカにも金が回らず、省庁として力も誇示できない。そこで、がれき引き受けを行えば、この交付金を支給するというのだ。本来必要があって、焼却炉の立替や延命策のために交付金を出すということである。これでは、交付金の支給理由を新に作るためにがれき問題を利用するという本末転倒した交付金支給になってしまう。

 311という国難にあって、心を一つにというキャッチが流れる中で、環境省の省益を確保するための予算権の拡大を狙う。おぞましいというほかない対応である。国のこの対応が、利権のにおいをかぎつけた市町村を集めることになる。いい加減にしてほしい。
 


4) がれきの広域化は、日本中を放射能汚染地帯に

 愛知以西の地域に行くと、環境省や国の今回のがれきの全国化の方針が、放射能汚染の恐ろしさを考えない、放射能汚染の拡散方針であることがよりはっきり分かってきた。国のレベルで俯瞰的に考えても、福島原発から降り落ちた汚染は、その場にとどめるべきであり、降り落ちた汚染地域は、除染したり、住民を避難させたりしなければならない。その際汚染地域における草木や汚泥の焼却による、2次被害、汚染地域での内部被曝を防ぐことに取り組むことは、予防原則から言ってもちろんのことである。

 それが首都圏に次ぐ経済圏である中部地方や都構想が掲げられている大阪に、汚染がれきを持って行くというのだから、ただ事ではない。

 また京都や奈良に毎年数千万人の観光客が訪れるが、がれきによる汚染の拡散は、日本を出口のない隘路に導いてしまうことになる。

 日本国内で、放射能汚染と格闘し、汚染の拡散を止めるために努力している日本国民の姿が見えなければ、観光客は、日本の観光地に足を向けることはないだろう。

 「汚染地域」の処理も不十分なまま、がれきをいの一番に受け入れ、その一方で、オリンピック招致を掲げる石原都知事も、自分の支離滅裂さに気付くべきであろう。
 



5) 避難母子を追いかけるがれきの理不尽と今後

 京都、大阪、神戸と行く中で、東日本の「汚染地域」から避難してきた幾人もの母親に会った。連れ合いを残し、わが子の将来を考え、異郷での困難な生活を選択した人たちである。子供を守るというのは、私たちの社会を守るということであり、すでに彼女たちの選択自体が、未来に火を灯す意味合いを持っている。

 小田原では、奈良や関西に避難を考えている母親にも会った。また放射能汚染による影響の拡大や被害の報道や入るごとに、「汚染地域」からの避難を考える人が増えるだろう。

 京都や大阪、神戸に避難してきた子連れの母親にとって、そのあとを追うようにがれきが運び込まれ、「非汚染地域」での焼却が始まれば、その場所ももはや安全な場所ではなくなる。がれきを全国に運び、広域処理するというのは、安全性の検証を棚に上げ、汚染を拡散するものでしかなく、避難してきた母親たちの思いも打ち砕くものである。

 一方で不安を抱えながらも「汚染地域」で、毎日の食材に気を配り、そして今以上の空気の汚染を防ぎ、格闘している多くの人がいる。

 武藤類子氏が昨年の脱原発集会で宣言した「つながる」ことの大事さが改めて意識に上る。今私たちは、「汚染地域」、「非汚染地域」そして「避難地域」で格闘する人々を「つなぐ」ことで、がれきの広域化を止めてゆきたい。
 



*1:週刊金曜日12月9日号「放射能汚染がれき焼却処理の間違い」PDF

*2:浮島さとし<フリーライター>戸羽陸前高田市長インタビュー 

*3:「空気と食べ物の放射能汚染」<リサイクル文化社2012年1月25日発売>青木泰著

*4:東京新聞「こちら特報部」「見切り発車の災害がれき処理」2012年1月21日 PDF添付

*5:東京新聞「こちら特報部」「広域化の問題」 池田こみち氏インタビュー
http://heiheihei.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/215-7cda.html

*6:毎日新聞2月2日

*7:神奈川新聞 黒岩知事 がれき受け入れ撤回
〈2012年2月18日http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kanaloco-20120217-1202170038/1.htm
環境省への黒岩知事からの要望書〈2月14日〉)

*8:http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1202140007

*9:市民から見た「災害廃棄物広域処理」の論点 

*10:月刊廃棄物2012年1月号「乗り越えよう環境行政最大の課題」PDF

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