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zoom RSS 326 がれき全国広域化問題―環境省交渉報告 環境ジャーナリスト  青木泰

<<   作成日時 : 2012/04/08 21:06   >>

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 ―明らかになったがれき広域化の数々の問題点―
326 がれき全国広域化問題―環境省交渉報告 
               20120329    環境ジャーナリスト  青木泰

 326がれき問題、環境省交渉は、全国から2千を超える賛同署名を背に受けて、交渉を行った。交渉の結果分かったことや環境省が約束したこと、そして市民や住民側からの新たな調査報告があった。環境省交渉に当たり、「放射性廃棄物全国拡散阻止!3・26政府交渉ネット」があらかじめ提出していた質問書(*1)に対しての回答は、約40分前後環境省から行われた。
 環境省交渉の結果分かった要点は、以下の通りである。
@ 環境省は、「放射能について知見がない」と公言した。
A 広域化の対象になっている被災がれきの汚染度について、環境省として調査を行っていなかった。各自治体が「汚染されていない」「汚染されていても低いレベルだ」というのは根拠がなかった。
B がれきの処理は、「順調に進んでいる」と発表し、また3年以内というのは、「適当」に決めていたことが分かり、広域化しなければならない理由を環境省自ら否定することになった。
C 地方の時代にあって、国の政策は、地方自治体に相談の上整備し、実施する必要があるが、道府県から出されている質問状や要請文に示された内容に、真摯に答えられず、今回の広域化問題を通して、環境省が政策立案能力に欠けることが分かった。
D 環境省の方針をチェックし、お墨付きを与える「災害廃棄物安全評価検討会」はこれまで理由なく、非公開とされてきたが、今後の13回目以降は公開することが約束された。
そして現行の廃棄物処理・処分施設であるごみ焼却炉や廃棄物埋め立て処分場で放射性物質を処理処分してゆくことの危険性を、島田市の「試験焼却」と最終処分場の浸出水処理施設からの排水ピットの土壌との調査によって、交渉の場で問題提起して行った。

1) 「放射能の知見がない」省庁が、放射能汚染がれきを扱っていた!!
326環境省交渉は、翌日の東京新聞では、「放射能の知見なし―環境省公言」と報道された。(*2)環境省は、交渉の冒頭で放射能汚染問題については、主務省庁でないため、答えられないと驚くべき発言を行った。がれきの広域化の受け入れを巡って、各地方自治体では例外なく安全性の問題が論議されている。その際、自治体の最後の切り札は、「環境省が勧めている。」「安全性については環境省が保証している」ということだった。
その環境省が、縦割り行政よろしく、環境省には「放射能の知見がない。」というのだ。
環境省の今回の広域化方針の元本になっている方針「福島県内の災害廃棄物の処理方針」(2011年6月23日)を作成するに当たっては、同年6月3日に出原子力安全委員会が出した「当面の考え方」(*3)を比較検討の上、処理方針をまとめたとされている。この「当面の考え方」では、
従来のクリアランスレベルを再生品にのみ限定し、「処理・輸送・保管」については、1msv/年を超えないこと、処理等を行う作業員についても被爆量が1msv/年を超えないこととした。
原子力安全委員会が、まず従来の法を逸脱する方向を示し、それに基づき、環境省は、がれきだけでなく、廃棄物の処理について以下のような方針を示した。原子力安全委員会の「当面の考え方」を無批判に受け入れ、それに基づき方針を示したのは、環境省である。それをいまさら「放射能の知見なし」とするのは見苦しい。比較検討のうえ、まとめた処理方針は、以下の3点である。そしてこの処理方針に基づき、環境省は広域化方針(*4)を決定した。
*可燃ごみー受け入れ基準無く燃やしても良い。
*不燃ごみー8000ベクレル/kg以下は、埋め立て処分してよい。−従来の100ベクレル/kg以下の80倍。
*再生利用−100ベクレル/kg
汚泥を所管している国交省や、廃棄物を所管している環境省は、原子力安全委員会に対し、ある意味では現場に直結する省庁である。そこが何故、原子力安全委員会の通知に唯々諾々と従ってしまったのか?
地方や現場を振り返ることなく、上位下達の通知に従い、その矛盾を突かれると「放射能の知見」は持ち合わせていないと平気で返答し、責任回避しようとする。
その結果、放射能汚染された可燃ごみが、基準無く燃やされ、80倍も緩い値で埋め立てることを認めることにより、放射性物質が、大気中に放出され、土壌に埋め立てられている。今日も、汚染地域で汚泥焼却灰やごみ焼却灰が8000ベクレル/kg以下だと安全だと学校の校庭の隅や、公園などに埋められているという報告が入ってきた。〈未確認〉その責任はどうするのか?
57%が賛成だったというNHKの調査も、「安全性について調べていないが」という前提があればどうなったことやら?放射能汚染について、すなわち安全性について知見がないのだから、今すぐ広域化方針を下してもらいたい。

2) 災害がれきの汚染度の調査なく、がれき処理の安全性を吹聴。
環境省は、がれきの全国広域化に当たって、がれきの排出先である宮城県・岩手県のがれきの放射能汚染の実態について、国として調査していないことを明らかにした。
 この問題に付いての環境省の具体的回答は、以下の内容だった。
@ 今回の全国化・広域化を進めるに当たって、福島県を除いたのは、福島県内のがれきは、宮城、岩手に比べて少なかったことが理由である。
A 今回がれきの広域化を進める岩手県と宮城県について環境省として、がれきの調査を行ったのかという質問には、行っていないが県で行っている。
この回答では、福島県内のがれきを広域化の対象から外したのは、量が少なかったからだと答えている。しかし、事実は福島県のがれきを広域化の対象から除いたのは、当初福島県のがれきのみ汚染されていたと判断したからに他ならない。
月刊廃棄物誌の今年1月号には、環境省の廃棄物リサイクル対策部伊藤哲夫部長は、「放射性物質が広範囲に拡散する問題が発生したのですが、最初は福島県の中だけの問題にとどまるだろうと見ていました。今から考えると甘かったと言わざるを得ません。」と述べている。(*5)
当初は汚染されていないと考えていた宮城県、岩手県のがれきが、汚染されているということは、途中から次のような問題で、分かったはずである。
* 牛肉・稲わら汚染(7月)
* 早川マップ、文科省の放射能汚染地図 (7月〜9月)
* 岩手県・宮城県内の市町村の焼却炉の焼却灰の汚染度 
* 京都の5山の送り火に使用しようとした陸前高田の倒壊した松からセシウム京都市検出。〈7月〜8月〉
今回環境省は、広域化に当たって、環境監視官庁としてまず行わなければならないがれきの汚染度のチェックを行っていなかったことを、居直り的に明らかにした。
実態を調査し、その結果がれき汚染が見つかり、広域化がストップされるより、調査していないことへの批判を受けたほうが良いという対応に見える。
共同通信の自治体調査では、広域化について、放射性物質に懸念し、86%も受け入れが難しいと発表しているが、そうした自治体の声にもかかわらず、今日まで、放射能測定調査について動きさえ見せなかった環境省の感度の悪さの背景にも、こうした打算があるのだろう。
被災両県からのがれきを受け入れようとする県や市町村、そして民間業者は、環境省の広域方針に依拠し、環境省が方針を出しているから安全面で安心できると説明している。今回の交渉の結果、環境省が安全面で保証しているという説明に根拠がなかったことが分かった。
この件は、全国各地でのがれき受け入れ交渉や議会での論議で、今回の交渉経過を報告し、全国に運ばれるがれきは、汚染されていない、汚染度は低いという話には裏付けがないことを話していただきたい。
関連して、愛知県や神奈川県からがれきの受け入れ基準を設けるように環境省に要請書が出されていたが、環境省の答えは、焼却炉の性能やその他もろもろの条件が異なるので、個別に定めてほしいという環境省の役割を放棄する酷い意見だった。
通常基準を設けるためには、被災地のがれきの汚染度を調査し、その上で基準を設け、仕分ける必要がある。基準を設けた以上は、基準を超えて汚染されているものは、どのように処理・処分するかを示す必要がある。
私たちの間では、福島第1原発周辺の地先に処理処分せず、そのまま保管するといった幾つかの案が話されているが、そうした施策を見越しながらまず、実態の調査を急ぐことが急務だ。

3) がれき処理は、「順調に進んでいる」!?
がれき処理「遅れていた」はずが「順調に進んでいる」と環境省は答えた。
@ がれきの処理の進展状況について、環境省から7%という回答があり、その一方で「順調」に進展しているという回答があった。これまで環境省は5〜6%の進捗度という回答で、「がれきの処理の遅れ」が災害復興の遅れに繋がり、そのため全国広域化が必要という論拠の下に全国広域化キャンペーンを行ってきた。その先頭に立ってきたのが細野豪志環境大臣だ。その点について、「順調」ならば、広域化の必要性の根拠がなくなるのではと再質問した。
A またなぜ3年以内にがれき処理を終えなければならないのかの根拠としては、阪神淡路の時は、大体3年ぐらいで終了した。がれきの積み上げられた山を一刻も早く処理したいという回答がされた。
これに対して交渉の中で、環境省に次のように迫った。
* 「何時まで」「何処まで」「どのようなコスト」で行うのかが明確ではない。
* 3年以内というのは、概略の根拠であるということが分かった。コスト計算では、阪神淡路のときと違って津波の問題を持ち出し、がれきの処理に要する時間を考えるときには、阪神淡路の時のままというのでは、根拠に乏しい。
* 津波で塩をかぶった農地の回復には、3〜5年かかるという話がある。そのときまで農地を借り上げ、じっくり地元で処理してゆくという方法がベストではないか?
これまで環境省が広域化の論拠としていたのは、次の2点である。
* がれきの進捗が遅れている。全国の自治体の助けで早く進めたい。
* 3年以内に終了するためには、全国の自治体の受け入れ協力が必要。
がれきの進捗については、「遅れていない」「順調に進んでいる」という驚くべき答弁が行われた。7%という発表との整合性を問われ、仮説置き場への移動は完了し、7%はすでに処分完了したものだけをさす、したがって、がれきの処理は、順調に進んでいる。という答弁だった。これは「遅れ」は、広域化の受け入れ分だけでなく、がれきの全体計画そのものが遅れている。その責任をどうするのかという環境省への責任論に構え、つい実態を明らかにした「答弁」ということができる。しかしこの答弁によって、「がれきの処理の遅れ」論は、広域化推進のための詭弁だったことが分かった。
また3年以内というのが如何に適当に決められたものなのかということも分かった。結局のところ広域化を正当付けるために設定されていたのであろう。

4) 100ベクレルと8000ベクレルのダブルスタンダードについて。
 環境省のこれに付いての回答は、100ベクレルは、原子炉等規正法のクリアランス制度に基づく、再生利用に限られ適用される数値で、8000ベクレルは、汚染特措法〈放射性物質汚染対処特別措置法〉に基づき、災害がれきについての埋め立て処分に当たって適用されるとの回答だった。
 これに対して政府交渉ネット側から原子炉規正法では、再生利用だけでなく、埋め立て処分についての記載もあり、(*6)これまで100ベクレルとしていたものを、8000ベクレルに基準を緩める根拠が説明不足である。現実にはダブルスタンダードになっているという指摘を行った。
その上で根拠のない8000ベクレルについては、撤回するように求めて行った。

5) 島田市の受け入れ実態を問う報告〈政府交渉ネットからの追加報告〉
もともと廃棄物の処理・処分施設で、放射性物質を焼却したり、埋め立て処分してよいのかは、今回の広域化処理で根本的に問われる問題だった。これまで廃棄物の処理施設では、放射性物質もその汚染物も取り扱ってはならないとなっていたのである。(例外的に年間10μシーベルトや核種ごとに定められたベクレル数以下の極極低レベルの門は廃棄物として取り扱われてきた。)
そのことが、実証的に明らかになった報告が、この日の交渉の場で、報告された。島田市の「試験焼却」は、安全性に問題ないとされていたが、市の公表したデータで計算すると、バグフィルターでは、60〜80%位しか除去できていなかった。
また島田市の最終処分場の浸出水処理装置から一般環境中に排出される放流水を受ける土壌から300ベクレル/kgの放射能汚染が見つかった。

@ 島田市の試験焼却について、島田市の実験データから計算したとき
バグフィルターでの捕捉率は、約60〜80%に過ぎず、約20〜40%が煙突から大気中に放出されている。
島田市の試験焼却結果について、一般的に言われている「安全性が立証できた」という点とは異なり、データから解析すると危険性を立証したものである。という報告が、交渉の場で政府交渉ネットの専門家からパワーポイントを使って報告された。また環境省の交渉に参加した職員には、その詳細報告も手渡された。(*7)
 これに対しては、環境省は追って見解を示すと約束した。
A また同じく島田市の最終処分場の浸出水処理装置からの放流水の件で、
政府交渉ネットの別の専門家から報告があり、次の点が指摘された。
 最終処分場の底に敷かれたビニールシートは、降雨時の浸出水を受け、それを浸出水処理装置に集め、そこで有害物を除去し、除去処理した後の処理水を、一般環境中に放流するようになっている。
 ところがこれまでの最終処分場は、放射性廃棄物の処理を想定せず、浸出水処理装置は、放射性廃棄物を除去できるものとはなっていない。
 その結果もあって、処理水を放流したピットの土壌から300ベクレル/kg
というセシウムが検出された。(*8)
 島田市の場合は、大井川に処理水を放流している。現在がれきの広域化によって、がれきが燃やされ、その焼却灰が埋め立て処分場に埋めてられれば、同様の汚染が広がることが考えられる。
こうした指摘に、この件も持ち帰りたいという報告があった。

<メモ>
 焼却炉のさまざまな事故や、埋め立て処分場での遮水シートの破損などについても政府交渉ネットから報告が行われ、一般廃棄物の焼却施設や埋め立て処分場で、放射性物質を処理処分してゆくことの危険性が指摘されたが、今回の島田市の報告事例は、想定される事故がない通常の処理でも、廃棄物の処理施設で、放射性物質を取り扱うことは問題があることを実証的に示した。これについては、環境省も言を無くした対応だった。

6) 環境省方針へ多くの知事、市長から異論続出!
多くの都道府県が、がれきの広域化に対して、真摯な疑問や要望書を提出している件について、質問書でも尋ねた。
 国が地方自治体が権限を持つ廃棄物の処理施策について、実行に当たって通常は自治体にあらかじめ相談する。そのようなことなく、進めてきたため、さまざまな疑問や要望書が出されているが、これに対して前向きの〈都道府県を呼んで相談する場を設ける等〉回答はなかった。

7) 会議の非公開から公開へ
災害廃棄物安全評価検討会等環境省の有識者の会議公開と議事録作成とについて環境省から「第13回以降については、従来の非公開から公開に変える。」という回答があった。その点は評価しつつも、1〜12回まで非公開にした経過、5回以降の議事録や会議録音の非公開、そして9回目以降、会議録音すら取らなかった件について、事実経過と責任の所在、そして今後の責任について明らかにするように求めた。
 今回の広域化の方針を決めるにあたり、環境省は623方針や811方針などを示し、その都度有識者会議=「災害廃棄物安全評価検討会」で確認を取ったと報告してきた。その有識者会議を非公開にし、議論の過程に蓋をし、この広域化方針を参加学者だけで決定し、法律さえ施行してきた。普通に考えても、市民団体代表や自治体代表、事業者代表等が参加している中央環境審議会などで、公開で行う必要がなかったか?
環境省が広域化に向け、闇雲に国、実は少数の官僚たちで事を進めてきたやり方は、決して許されるものではない。
今後公開にするのなら、非公開にしてきた点の責任が不可欠である。

8) 今後への課題。
午前中の参加賛同団体との交渉に向けての意見交換の場で数々の意見が出された。産業廃棄物としてすでに流れているがれきについての規制やがれきだけでなく、汚染地帯で焼却されている汚泥や草木ごみを含む生活ごみの焼却による大気汚染の問題。そしてそうした焼却現場で働いている労働者の健康問題。
私自身も「326政府ネット」の一員として、即急に次の課題に取り組んで行きたい。
                       
*1:「放射性廃棄物全国拡散阻止!3・26政府交渉ネット」の環境省への質問書
*2:東京新聞2012年3月27日「こちら特報部」佐藤圭記者
*3:「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分の安全確保の当面の考え方」原子力安全委員会
*4:「災害廃棄物の広域処理の推進についてー東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係わるガイドライン」(2011年8月11日―10月11日一部改定)
*5:月刊廃棄物2012年1月号「乗り越えよう、災害廃棄物!環境行政最大の課題に挑む」
*6:原子炉規正法第61条の2の第3項 ここでは基準値〈たとえばセシウム134や137の場合100ベクレル/kg〉以下では、廃棄物処理法の第2条廃棄物に取り扱うとした。したがってそこでは、再生品に限られず、焼却する可燃ごみ、埋め立て処分される不燃ごみに持て起用されると考える。 (廃棄物処理法の定義で、放射性物質およびその汚染物については、廃棄物から除外するとしていたものを含めることにした。)
*7:島田市試験焼却 N氏作成
*8:島田市最終処分場−「放射能濃度測定結果報告」

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