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zoom RSS 放射能汚染廃棄物を大気中ばら撒く環境省 最悪方針―放射能がれき焼却処理

<<   作成日時 : 2011/09/02 10:22   >>

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放射能汚染廃棄物を大気中ばら撒く環境省

最悪方針―放射能がれき焼却処理
            20110627 環境ジャーナリスト 青木泰


1) 究極の有害物の焼却・埋め立てという最悪の方針提示

環境省は、福島県内の136箇所の仮設置き場の放射能汚染されたがれきの処理方法として、約30%ある可燃ごみは市町村の焼却炉で燃やし、残りの約70%の不燃ごみは除洗すらせず、埋立て処分する方針を決めた。環境省の肝いりで作られた「災害廃棄物安全評価検討委員会」(=有識者検討会)の第3回検討会(6月19日)がこの焼却・埋立てと言う通常処理の安全性を確認したとマスメディアに流した。

<ごみ焼却は大気を捨て場とする処理方法>

しかしちょっと待って欲しい。福島のがれきの放射能汚染は、第1原発から今も放出されている放射性のチリや灰が付着したものである。「放射性物質及びその汚染物質」は、究極の有害物である。通常の廃棄物と同様に焼却や埋立て処理してよいと言うのは、誰が聞いても首をかしげる方針である。ちなみに放射性物質は、焼却したからといって無くなる訳ではない。むしろ微細なチリとして大気中に飛散させ、清掃工場周辺部を汚染する。その上焼却灰に濃縮された形で残し、保管一つを取っても後処理を困難にする。清掃工場周辺の人はたまったものではない。

同様に放射性物質を飛散させることができるからと、がれきに向かって工業用の扇風機で風を吹きかけたり、消防用の放水ホースを使って水を吹きかけ、周辺に飛散させたとしたらどうだろうか?その風や水を吹きかけられる方にいる人は、きっと反対するに違いない。

“火”“風”“水”を使って飛散させる事は、放射性物質の拡散でしかなく、これで何事かが前進したとするのは、世界の笑いものになる。

<ごみ焼却炉は放射性物質の分解除去装置ではない。>

これまでの事例でも高濃度有害物の処理は、市町村の焼却炉や通常の汚染除去プラントでは、除去できない事が分かっている。

例えば850度以上の高温度で殆ど分解されると言うダイオキシンでも、大阪能勢町の焼却炉から見つかった高濃度のダイオキシンは、焼却炉で分解処理することができず、ドラム缶に入れて長い間保管した。

八王子の農薬会社跡地が高濃度の水銀で汚染されていた問題では、水銀回収プラントを設置し、土壌の除洗を行った。汚染土壌を順番に高温度に加熱し、土壌から水銀を蒸発させ、その蒸発させた水銀を冷却して回収し、その排気を放出するプラントである。ところが、汚染度が高く、水銀を回収した跡の排気中の水銀濃度が高く、その排気を吸った周辺住民が、倒れたり体調が悪くなって大騒ぎになった。

市町村の焼却炉は、元々有害物の除去装置として造られたものでない。市町村の街中から排出される可燃ごみの量を減らす減容化のための手段に過ぎない。バグフィルターなどの除去装置は、焼却の過程で産み出される有害物や吐き出される有害物を除去するための装置に過ぎず、高濃度に放射能汚染されたものを除去分解できない。

家庭や地域の小規模事業者から排出されるものは、たとえ災害があっても高濃度に放射能汚染される事など前提に作られていない。

したがってたまたまバグフィルターが付設されているからと言って、それが放射性物質の除去にうまく機能するのかは、相当の検証が必要である。

ところが環境省は、バグフィルターが付設されている焼却炉で燃やせば、放射能汚染がれきも処理が可能という方針を出した。

なぜ有識者会議でチェックされなかったのか?

しかもこの方針、環境省や東京電力が、自らがれきを処理すると言うのではない。がれきを処理するのは、自治体=市町村である。市町村は納得しているのだろうか?

環境省は、がれき処理に当たっての指針を示したに過ぎない。放射能汚染されたがれき処理という実務を担う自治
体ではどのような問題が待ち構えているのか?

そしてこの無責任方針は、私たちの生活や健康生命にどのような影響を与えてゆくのか?

そして私たちは何をすべきかを考えてゆきたい。 



2) “身内”の有識者検討会ではチェックできない

有識者検討会といっても実態は、次のようにお寒い限りである。

まず第1に有識者検討会の構成はどうなっていたか。廃棄物関係の日本のトップの学者を委員として選んでいるものの、なぜか市民や自治体や農業や漁業に携わるものの代表は選んでいない。また安全評価といいながら医学や生物学や農林業の専門家は選んでいなかった。脱原発を決めたドイツでは、物事を決める時に住民参加は条件としているが、専門家の陣容といいこの有識者会議のメンバー構成は余りに偏っている。ここには住民側に立って厳密に安全性をチェックしようと考えた人がいたのか疑問だ。

第2に有識者検討委員会の役割は、どうなっていたか?環境省の話しでは、環境省の方針を安全性の面で評価をする検討会と言うことだった。通常この種の有識者検討会ならば、まずがれきはどのように処理すれば、住民や自治体に安全かつ経済的負担を掛けない形で進める事ができるかという基本的な論議から検討が開始される。ところがこの会議では、環境省の提出方針は、がれきを市町村で通常処理すると言う方針が先に決められており、その安全性についてのみ検討評価すると言う検討会だった。

環境省の方針で示された通常処理(=焼却・埋立て)に疑問を挟む討議は討議課題から外されていた。これでは、環境省の方針は、専門家の安全評価を得ているという“飾り付けのための”検討会だった言われても仕方がない。
科学は現状の批判と創造の中から産み出されて来た。お上に従順では、科学的検討は、怪しくなる。

第3に有識者検討会の目的自体を、途中で変えていた。がれきは避難区域や計画避難区域のものはそのままに、福島県内の136箇所の仮設置き場に積み重ねられている。当初は、比較的低汚染レベルの10町村の処理に対しての評価する目的だった。ところが、途中から福島県内の136箇所の汚染度の高いがれきも含め、仮置きしているもの全ての処理が検討対象になっていた。通常この種の有識者会議は、目的に対応させて作られる。この検討会は、目的すら途中で変更し、会議体としての自立性を疑わせた。

第4に極めつけは、会議を非公開にしていた事である。

専門家による技術評価の会議がなぜ非公開でなければならないのか?日本の廃棄物行政を最悪方向に舵とりする今回の決定が非公開で行われたのは、筆者は、納得がいかない。環境省の担当者は「活発に意見を出してもらうため」と述べていたが、(*1)別の担当者に聞いたところ「討議に載せる基礎データが、出所を隠さないと出してもらえないものがあり、非公開にした」と答えた。出所を明かせないデータを議論の参考にできる訳はなく、役人は知っていて良いが国民には明かせないと言う理由の組み立て自体が、おかしかった。

原発事故によって原発の安全神話に手を貸してきた原発村の学者の犯罪性が明らかになった。その直後の有識者検討会である。会議非公開では、従来手法となんら変わらず、役所のチェックはできない。

*1―放射能災害廃棄物の焼却処理―放射性物質を拡散する世界の非常識



3) 世界で初めての暴挙とメディアの役割

「福島第1原発:環境省放射能がれき焼却認める」 (毎日) 
「福島のがれき、8千ベクレル以下の焼却灰埋め立てへ」(朝日)
「福島がれき、8000ベクレル以下で埋立て可、環境省通知へ」(産経)
「福島がれき、基準値以下なら埋立てOk」(読売)

 各紙は以上のように見出しを打って今回の有識者検討会と環境省の方針を6月19日から20日に掛けて発表した。(東京新聞は「福島の汚染可能性がれきー焼却・埋立て容認へ」の記事を6月6日付で報道し、第3回有識者検討会(6月19日)で正式に決定予定と先に報じていた)

しかし数日後出された第3回有識者検討会の資料を入手し、環境省の担当者に取材したところ、環境省の方針の最大の問題は、これまで廃棄物として取り扱っていなかった放射能汚染物を、市町村の清掃工場の焼却炉で燃やして良いとの方針を出した点にあることがわかった。放射能汚染廃棄物を焼却炉で燃やせば、放射性物質を拡散させる。これは原発による放射能汚染の2次被害をもたらす事であり、私も入っている廃棄物循環学会の専門家なら分かることである。正直言って世界で初めての暴挙である。

ところが、マスメディアは、「毎日」以外焦点を外している。焼却灰の埋立ても問題であるが、焼却しなければ焼却灰はでない。福島県内には、バグフィルターを備えた清掃工場は12箇所あるが、そこで燃やされ始めれば、福島第1原発に加え、放射性物質の発生源が、一挙に13箇所に増やしてしまう事となる。清掃工場の焼却炉で燃やされ、チリ状に分解された放射能の灰は、除去装置でもとりきれず、周辺部に降下する。汚染は、年間の風向き方向や煙突の高さによって、高濃度に汚染される場所が決まってくる。新たなホットスポットが作りだされることになる。(*2)

検討会が非公開になっているため、メディア各紙の記者は、環境省からの又聞き情報で記事を作り、それぞれに焼却や埋立てに重きを於いた報道を行った。会議が公開されていれば、要点を掴んだ記者は、出席した「有識者」以外の有識者や関連自治体や住民に取材し、この問題は、大きくかつ的確に報道されただろう。

ところが、有識者検討会では実際のところ何が決まったのか?どんな議論が行われたのか?一切ベールで隠されたまま放射能汚染がれき=廃棄物をこれまで通り通常処理(焼却・埋立て)して良いと言う方針が、批判的観点で捉えられることなく、報道されてしまった。検討会を非公開にしたのは、メディア対策を考えてのものだろう。

環境省は、その後説明会(6月23日)を開き、今回の方針を福島県下の自治体に説明した。これも非公開にしたが、自治体から「丸投げ」との批判が出たことをメディアが伝えている。

放射能汚染廃棄物については、がれきの問題だけでなく、汚泥や焼却灰が、その利用先の事業体から、それぞれ堆肥やエコセメントに出来ないと断られたことなどが報じられ、問題が広がっている。そうした中で、環境省は福島のがれき処理で初めて方針を示した。そのため、すでに東京23区の清掃一部事務組合などの全国の自治体は今回の方針を処理の基準にしつつある。メディアのチェックを避け、つまり住民に相談しないまま作成した方針が、独り歩きしつつある。

我々が住んでいる国は、環境の最重要方針すら国民に隠し、役人たちの勝手に事を進めようとしている。このことは私たちも肝に銘じ役人のやり方をチェックして行きたい。

しかしメディアも国や官僚機構の手口について学習する事が必要ではないか?重大な問題ほど最初は小さな取り扱いで出発させ、(今回福島の10町村のがれきの処理)いつの間にかテーマを拡大し、(福島県全域の仮設置き場に積み重ねたがれき処理)、そして法制度の仕組み上は、その事例を全国の放射能汚染事例の処理に当たっての参考とさせる。もし最初から全国で起きる放射能汚染廃棄物の取り扱いについてと課題テーマを挙げていれば、“身内”だけの専門家会議の議論ですまなかったはずだ。

住民活動や市民運動、権力に対して独自の視点を有している専門家、そうした人たちとの連携なしには、メディアは、国や役人たちに玩具にされてしまう。そしてメディアが権力の監視役を降りれば国が腐敗する。

* 2 「プラスチックごみは燃やしてよいのか」青木泰著 リサイクル文化社発行 P96〜



4) 有識者検討会とその問題

  @ 環境省の担当者が説明した検討会の決定内容

 環境省の担当者は、有識者検討会で確認された方針として、以下の要点(a〜d)をしめした。これは6月23日になって環境省の「福島県内の災害廃棄物の処理方針」として示された。(*3)

放射性廃棄物をバグフィルターが設置されている焼却炉なら燃やしてよいとするとともに、燃やしたあと残る焼却灰は、汚染レベルに応じて3段階、通常埋立て、1時保管、遮蔽施設での別保管を行うとしている。このレベルは、従来の80倍も緩和された甘いレベルとなっている。

またがれきの中に占める不燃物の量は、約70%あるが、これらは除洗処理すら行わず、そのまま埋め立て処理してよいとした。福島県の内のがれきは、約290万トンとされているから、約200万トンのがれきを埋立てる処分場−しかも放射性物質の監視を怠る事のできない処分場が必要となる。喜ぶのは、産廃業者だけだと言う声も上がっている。

a:今仮置き場に積み重ねられているがれきは、バグフィルターを設備として備えている市町村の焼却炉で焼却して良いと言う方針を出し
b:燃やした結果排出される焼却灰の埋め立て処分については、放射能の汚染度に応じて、1kg当たり
  8000ベクレル以下          通常埋立て
  8000ベクレル以上〜10万ベクレル  一時保管 (飛灰も同様の処分)
  10万ベクレル以上           遮蔽施設で保管
c:不燃ごみについては、そのまま埋立てても良い。
d:クリアランスレベルは、再使用するものにのみ適用する。

* 3 「福島県内の災害廃棄物の処理方針」環境省2011年6月23日

A 焼却処理しようとしているがれきは、汚染基準を越えている。

今回の環境省の方針の最大の問題点は、バグフィルター等を備えた焼却炉で燃やせば、がれきの放射能汚染のレベルにかかわりなく、汚染は解消されると方針化した点である。がれきの汚染レベルについて何の注釈もなく、136箇所のがれきは燃やしてよいとしているのだから実質何でもOKとしていることになる。

では、今回焼却炉で燃やしてよいとしているがれきの放射能汚染の実態は、どのようになっているか?

有識者検討会に提出されている資料(*4)から読み取ってみると、環境省の調査の結果、がれきの放射能汚染は、
・ 1m離れたところでの空間線量率が、約0.2〜2.4μSv/h(毎時マイクロシーベルト)
・ 放射能濃度(Cs134+Cs137)が約0.1〜5Br/g(1グラムあたり0.1ベクレル〜5ベクレル)100〜5000Br/kg(1キログラムあたり100ベクレル〜5000ベクレル)となっている。

このがれきの空間線量率は、政府が当初示した基準値である「年間20ミリシーベルト、毎時3.8マイクロシーベルト」の値と比較すると136箇所とも絵に書いたように下回っている。

しかしこの政府の20ミリシーベルトという基準値は、首相の参与の小佐古敏荘東大教授が、涙の辞任会見を行い、否定した値である。国際的には、6月22日に千葉県の野田市が、住民の要望を受け、定めた「年間1ミリシーベルト、毎時0.19マイクロシーベルト」の値がICRP(国際放射線防御会)の定めた基準である。

今回焼却してよいとするがれきの空間線量率は、時間当たりは、すべて0.19μSv/hより大きく、10倍近い汚染度のものもある。

また放射能濃度も、従来放射性廃棄物の判断の基準としていたセシウムのクリアランスレベル0.1Br/g(1グラム当たり0.1ベクレル<=1キログラム当たり100ベクレル>)の1倍から50倍もある。

つまり環境省が、今回焼却処理してよいと言うがれきは、国際的基準や従来の国内基準から見れば、取り扱いを注意して行わなければならない放射能汚染廃棄物である。

* 4 第3回有識者検討会資料「図12災害廃棄物の放射能濃度の上限と平均放射線量」

B 放射能汚染廃棄物の焼却実験なしの机上の空論

今回燃やそうとしているがれきは、明らかに放射性廃棄物として認定される有害物である。それにもかかわらず、環境省の方針では、a「バグフィルターを設備として備えている市町村の焼却炉で燃やしてかまわない」とした。

福本勤精華大学講師―工学博士は、放射性物質を焼却すれば微細なチリとガスが発生し、これらがバグフィルターで除去できるかどうか実際の焼却炉を使って実証実験する必要があるという自身の見解を関係者に送っている。

ところが今回有識者検討会に提出されたどの資料を見ても、実証実験した報告資料はなく、バグフィルター付きの焼却炉で燃やせば、周辺環境や生命・健康に影響ないとしている。

私は、廃棄物学会(現在は廃棄物資源循環学会)に入会して約20年になる。その経験から言えるが、もし環境省が放射能汚染廃棄物をバグフィルター付き焼却炉で燃やしてよいと学会に報告したとすれば、実験例がなく、理由の希薄さゆえに多くの疑問が出され、結論の撤回を求められることは間違いないといえる。

普通この種のレポートを出すなら、少なくとも以下のような実験計画を立て、実証実験に入る。

@ がれきの放射能汚染実態は、空間線量率でどうだったのか。汚染濃度はどうだったのか。その汚染度の違いによって焼却炉の煙突から排出されるものに違いはないか?−汚染度が高いときには取りきれず、煙突から出るという心配はないか?
A 焼却炉は、どのような種類の焼却炉を使ったのか?種類による違いはないか?
B 投入したごみの組成はどうだったのか?
C 燃焼温度の変化は?
D 焼却残灰と煤塵をバグフィルターで捕捉した飛灰には、放射性物質は、どれだけ含まれていたか?また煙突から出る排ガスには放射性廃棄物は「0」もしくは「0」に近い値だったか?
E 煙突から排出される放射能のチリは、周辺部にどのように降下するのか?年間の風向きー風配図との関係。
F それを呼吸器を通して吸ったときの人(特に妊婦、乳児、子供)への内部・外部被爆の影響。
G 煙突から排出される放射能のチリによってもたらされる農業・畜産への影響
H 今も続く福島第1原発からの周辺地としての被爆に加え、これらF,Gの影響を加味した総合的な影響

実際環境省の担当者に、放射性物質を焼却処理し、バグフィルターで確実に取れるという実験を誰かやった事があるのか、と聞くと驚いた事に、これから実証実験をするという。資料を見ても、筋道の立った提案がないはずである。

もし環境省が今回のような方針を提示したいのなら、実験し、その結果をまとめてから検討会議に図る事が先決である。机上の計算では話にならない。

C 余りに日本的―研究者からは焼却を薦める報告書の提出はない

環境省が、放射性廃棄物を実際に焼却実験したわけでなく、なぜ、バグフィルターを付設した焼却炉で焼却すれば良いと言う結論が出されたのか?
環境省に代わって、有識者検討会に出席した研究者が、そのような主張を行ったのであろうか?

有識者検討会に出席している国立環境研究所の大迫政浩資源循環・廃棄物研究センター長が資料として提出した京都大学の論文「都市ごみ焼却施設から排出されるPM2.5等微小粒子の挙動」(*5)が大きな役割をはたしていたことが分かった。微小微粒子が、バグフィルターで99.99%除去できたとする実験結果である。この論文を一例として説明し、放射性物質の焼却炉で同様に除去できると主張している。

しかしこの京都大学の論文は、微小粒子が喘息等に影響を与えると言う米国や環境省の報告があり、既存の焼却炉で除去できているかの実験をしたものであり、実験例は少なく、しかも放射性廃棄物についての実験ではない。

例えば環境省が、この論文を根拠として、バグフィルターを備えている焼却炉からでる排煙は、喘息に影響を与えないと言う見解を発表すれば、論文発表した研究者たちは、そこまでは検証していないというだろう。

ましてや自分達の論文が、日本における放射性物質の焼却処理の開始を理由付けする論文として使われていたと知ったら、どのように思うだろうか?

普通の研究者なら論文を引用した大迫政浩氏自身が、放射性物質についての実験をした上で結論を出すべきと怒り出すであろう。

学会で発表した論文は、ほかの研究者が、引用して活用することは許されている。いわば一人歩きするが、その場合、引用は引用者の責任となる。

従って大迫政浩氏が、この論文を引き合いに、放射能汚染がれきを焼却してよいという主張をするのなら、自分の見解として放射性廃棄物を燃やしてもバグフィルターを付加していれば安全性が保たれる。放射能の拡散にはつながらない。この点をきちっと論証する報告を発表すべきであると考える。

ところが今回有識者検討会に提出された資料を見ると、研究者からはがれき焼却をしても大丈夫と言う論文やレポートの提出はない。専門家や研究者にとって、検討会の1参加者として発言するのと、論文やレポートで自らの主張を提出するのは、決定的な違いがある。もし今回の焼却処理によって2次被害が起こればその責任に立ち向かう事になるからである。(ちなみに会議参加者がどのように発言したかさえ、7月5日の現在発表されていない。)

今回の環境省の方針は、世界で初めて放射性廃棄物をごみの焼却炉で燃やしても良いという驚愕する方針である。したがって専門家や研究者が、それに賛成するのなら、後世に対しても責任を示す形で、焼却して良いという自らの主張を論文やレポートにすべきでなかったか?ところが環境省側の方針に沿って資料を提出している大迫政浩センター長でさえ、自分の見解を論文や報告書として提出していない。

今回の有識者検討会は、環境省が方針にしたいという点があれば、それが世界の常識に外れ、しかもどの研究者も自分の見解として主張していないことであっても、了解を与えていた。いわば総無責任体制で今回の方針に了解を与えていた事が分かった。(それとも了解が得られたというのは、事実と違うのか?)

* 5「都市ごみ焼却施設から排出されるPM2.5等微小粒子の挙動」京都大学大学院 2010年 廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集



5) 自治体に丸投げの焼却・埋立て方針

 普段私たちは、自分たちが出すごみは、誰が処理、処分しているかを余り意識していない。国(環境省)?都道府県?市町村?と問われると応えに窮してしまう。実は市町村が行っている。

 @ 放射能汚染されたがれきの処理は誰の責任か?

環境省は、今回がれきについて焼却・埋めての方針を決めたが、これは自分たちが、がれきの処理をすると言う方針ではない。福島県内の市町村の焼却炉や埋立て処分場で処理して欲しいと言う方向を決めたに過ぎない。
関西の有名知事ならば、国が何の責任も持たず、このような事を決めれば、「断る」と自治体を代表して発言したのではないか?

日本のごみの処理を定めた廃棄物処理法では、市町村の街の中の家庭や小規模事業者から排出されたごみは、市町村の責任で、ごみ処理することになっている。(*6)その際減量策を基本計画として作成し、(*7)その基本計画に基づき市町村がごみの処理をしなければならないことになっている。

通常のがれき(=災害廃棄物)ならば、この廃棄物処理法と災害特別立法の定めに基づいて市町村が処理することになる。

ところが今回福島県内のがれきは、放射能汚染を受けている。福島第1原発の事故によって飛来した放射性物質=放射能の灰が、付着して汚染されたものである。街の中から出たごみと言えども、放射能汚染がれきは、東電と国が何時までにどのように処理するのかの方針を示すのが先であり、それが基本だ。

ところが、今回の決定は、放射能汚染がれきを燃やしても埋立てても安全だ。どうぞ市町村の責任で、周辺住民や作業者の安全を確保しておやりください。と言方針である。

これは、国や東電が、何を何時までにどのように行うのかを抜きにした方針でしかなく、主役も脇役も欠いた端役だ
けの芝居のような方針である。

安全だからどうなのか?

東電や国がお金を出して処理処分するのか?

そうでもない。安全だから市町村がやってくれと言うのである。

本来なら、まず東電と国が市町村に迷惑をかけていることを謝罪し、がれきの処理を計画を示し、その処理が安全に行える根拠を自治体や住民に説明しなければならない。

今回の環境省の対応は、東電や国の責任を棚上げにし、責任を自治体に負い被せるものでしかない。地方の時代と言いながら、体質は、中央集権そのものの対応である。

* 6 廃棄物処理法第6条の二
* 7 同     第6条第1項

A 自治体に丸投げする前に

放射性物質は究極の有害物である。どんなに少ないからと有害性が除去できない。「この量以下の被爆なら安全です」と言う量はない。(*8)この有害物の処理に当たって、廃棄物処理法では何の規定も禁止事項も定められていない。

もしそのまま市町村で放射性廃棄物の処理に入れば、取り扱う作業員や清掃工場や埋め立て処分場の周辺の住民への影響が懸念される。

そのため、環境省が有識者検討会を開催し、検討してきたわけだが、決まったのは通常処理はOKという驚くべき見解であった。

これでは、自治体の現場では、実質何も取り扱うことができない。安全だと言う事が、一人歩きし、法律上の禁止や規制措置が行われていなければ、安全確保のための調査や検査も予算化できず、実質野放し状態で処理処分が行われることになる。

6月23日環境省は、福島県下の市町村を対象にした今回の説明会をこれまた非公開で福島県下で行なった。参加した自治体から放射能汚染廃棄物を自治体に丸投げするものでしかない。との不満の声が上がったと言う。当たり前である。

例えば、燃やすごみについて、基準はなく、高濃度汚染物でも燃やせるとされているが、環境省方針ではちゃっかりと「焼却施設や最終処分場の周辺住民や作業者の安全を確保する事が大前提」と記載している。

つまり環境省はがれきを燃やしたり、埋め立て処分してよいとは言ったが、「安全を確保する」が「大前提」であり、もし2次被害がでれば、責任は、自治体の長が引き受ける事になるという方針なのである。

しかも排ガス規制や燃やすに当たっての管理規定もない。内々尽くしである。

現場を知らない環境省の役人の作文である事が分かる。

自治体に丸投げする前に

1) 136箇所の仮設場所の解消を急ぎ、当面避難区域等に場所確保し、分別保管する。
2) 安全な除洗策・処理方法について検討を開始する。
3) 放射性廃棄物の処理に当たっての環境基本法や環境諸法、廃棄物処理法等の法令の改定の検討を行う

等が必要である。

その際、がれきだけでなく、放射能汚染された汚泥などの処理処分も当然考える事が必要である。
実際のゴミの処理の流れを考えても、今回の環境省方針では、杜撰すぎて安全性を担保しながらごみの処理はできない。

 B 都合のいいときだけ処理を押し付けるのは勝手だ

先の報告書(*1)でも記載したが、日本の法律の体系では、安全神話で包んできた原子力政策を法律体系の上
でも特別扱いをし、事故が起きる事やその結果放射性物質が、我々の働き、生活する場所に降り注ぐ事を想定外においてきた。

そのこともあって、原発事故によって10万人前後の避難者を出し、ふるさとを奪いながら誰一人責任を取っていない。また犯罪者として逮捕されていない。

従って自治体は放射能汚染がれきの処理を唯々諾々と引き受けるのではなく、まず、事故収束に向けての実現可能な計画と、それまでの避難や生活の糧を奪われることへの補償計画を提示させ、それと同時にがれきの処理を東電と国に迫るべきだろう。

* 8:「原発のウソ」小出裕章京都大学准教授著



6) 急いで未来に禍根を残してはいけない。

ではなぜ今回の方針を急いだのか? 環境省の担当者に聞いてみると、一刻も早くがれきの処理がしたかったという。しかしがれきの処理は、目の前のごみを処理処分して無くすというような量ではない。量の多さゆえに時間がかかる。長期にわたる影響も考えなければならない。

@ 現状方針で進めて5〜10年はかかる。

がれきの量は、福島県全体で約290万トンと言われる。福島原発の計画避難区域や避難区域のがれきは今も手付かずであるが、原発の収束後は、それも処理課題となる。その内可燃性のものは、約30%として、福島県内の市町村の清掃工場を使った焼却処理は、約90万トンとなる。東京23区850万人が出すか1年間の可燃ごみ量の半分で、膨大な量に及ぶ。

今回の環境省の方針通りに、これを福島県内のバグフィルターを設置している焼却炉で燃やすとすると、概算で次のようになる。

福島県の焼却施設で、バグフィルターを設備しているのは、約半分の12箇所であるが、そのごみ処理量は、年間37万トンである。予備炉や余剰能力を使うと仮定し、3割から5割の処理が可能と予測する。3割として年間約10万トン、5割として約18万トンである。

焼却だけで今後5年から10年もかかることになる。

長期間にわたり、放射能汚染廃棄物を燃やし、煙突から放射能のチリ、放射能の灰を飛散させ何もないわけはなく、周辺汚染が見つかれば、その時点でこの試みは中断を余儀なくされるだろう。

また不燃ごみが、70%として約200万トンの膨大な量になる。これをそのまま埋立てるとすれば、後楽園の50倍近い埋立て処分場が必要になる。しかもその処分地は、放射能汚染不燃物の埋め立て場となり、その後何百年も監視の目を外せない。

除洗し、放射能を取り除き、なぜ安全性を確保した上で、再利用等を図らないのか?

いずれも一朝一夕とは行かない。

たとえば現在公害問題で日本ののど元に刺さっているアスベスト問題。国は、アスベストの危険性を無視し、禁止や規制処置を取らなかった。そのため、建材として使われ、その生産や建築物への活用の過程で、多くのアスベスト被害者を出し、今後も、耐用年数が来た建築物の解体などで、作業者や周辺生活者に健康被害を出すことになる。賠償と後処理費用に莫大なお金が使われている。

今回の環境省の放射能汚染廃棄物の焼却・埋め立て方針は、2次被害を生み出し、アスベスト以上の大公害問題となる怖れがある。

直ちに方針の撤去を求めたい。

A 現状から目をそらさず、解決策を考えよう

急ぐといっても5年以上はかかる事業である。担当者に再度指摘すると、目の前のがれきがすぐ消えなくとも、少しづつでも減ってゆけば皆さんは将来に希望をつなぐ事ができるようになる。と応えた。

しかし俯瞰から物を見て住民が将来に希望を持てるようにするには、

・ 原子炉の事故の情況をすべて隠さず明らかにし、
・ 最悪事態を考え、かつ現状の放射能汚染レベルの高さを考え、子供たちを疎開させ、
・ 事故収束を東電だけに任せず、国が中心になって働きかけ、
・ 放射能汚染されたがれき、土壌、作物について対策指針をしめし、
・ 原発賠償をまず国が立て替えて、住民の生活や労働の場の確保に努める

等を行うこと。これらが実行に移され始めて“希望”が見えてくる。霞ヶ関にいるお役人が住民に希望を持てもらうために燃やしたり埋め立てたりする現状福島第1原発から放射能の灰は、放出され続けている。

福島県の現状は、放射能の空間線量率が高まり、学校だけでなく、放射能汚染濃度が高いホットスポットが増えつつある。

住民は自治体に協力したり、独自にグループを作り、子供たちの通学路に沿って汚染度を測り、雑草や土壌を取ったりして子供の放射能汚染をできるだけ減らそうと除洗作業に取り組み始めたが、汚染は今も広がっている。

その状況下で、新たな汚染の発生源となる焼却や埋めてては、行ってはならない。

汚染除去のために取り除いた雑草などは、燃やさず別保管したいと田中俊一元原子力学会長は、NHKの番組でも、話をしていたが、それが燃やされると分かれば、住民たちの努力に水をさすことにならないか?

放射能がれきを焼却すれば、煙突から出る放射能の灰で、2次被害をもたらす懸念がある。それは誰でも考える心配事である。

福島県内136箇所の仮設置き場に積み重ねられたがれきを、一刻も早く片付けたい。これは住民及び市町村長の願いでもある。

しかしその処理が2次被害をもたらしては元も子もない。従来放射性廃棄物として取り扱うかどうかの基準値としてきたクリアランスレベルを無くしたり、緩和したりして、急場をしのぐ。これは最悪の選択である。

繰り返すが、当面は、がれきを例えば避難区域などに分別して集め、今以上の汚染を避けるため、シートをかける等して原発収束まで保管し、その間に法整備や安全な除洗処理、減容化処理を考え、その上で国と東電が、責任を持って処理策を考える。もちろん住民参加の審議を行い方針を決定する。

どたばたの中で燃やしたり、埋立てたりするのは、将来に禍根を残す事になる。


今後 今回の環境省方針は、原子力安全委員会の決定(6月6日)を受け、その方針を踏襲する形で作られていたことがわかった。

その基で、

@ クリアランス制度を実質廃止し、放射能汚染廃棄物でも通常処理できるようにしたり、
A 有害物の入り口管理を止め、机上管理と出口管理だけにしつつある。
B またバグフィルターで何でも出来るかのバグ全能主義を唱え、
C 一般廃棄物の埋めて処分場に高濃度放射能廃棄物を捨ててよいとしている。

生活者住民にとって見過ごすことの出来ない処理が進行しつつある。
それらの点について少しづつレポートしてゆきたい。


注)この小論を書き上げた後、7月15日付で環境省が、第4回の有識者検討会を開催し、埋め立て基準を6月19日に変えた1キロ8000ベクレルを、10万ベクレルに変更すると発表した。放射能汚染が広まり、8000ベクレルを超え、現状の対策では、自治体が対処できないところが出始めたので、10万に変えたのだろう。環境省の方針が根拠を持たないものであったことが改めて分かったが、放射能汚染の事態は、現状も進行している。福島第1からばら撒かれている量は、想像を絶する量である。この発生源を多発化し、将来に禍根を残してはいけない。

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放射能汚染廃棄物を大気中ばら撒く環境省 最悪方針―放射能がれき焼却処理 青木泰のブログ/BIGLOBEウェブリブログ
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