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<<   作成日時 : 2011/09/02 10:04   >>

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―放射能汚染災害廃棄物の焼却処理―
放射性物質を拡散する世界の非常識

20110614 環境ジャーナリスト 青木泰


放射能で汚染された福島県内のがれきを、国は市町村の焼却施設で焼却しようとしている。福島第1原発だけでなく、放射性廃棄物の放出源が多発化することになる


放射性廃棄物の焼却処理は世界の非常識

放射能汚染災害廃棄物を減容化のために燃やして処理する。今国はこの処理を日本の廃棄物関係の専門家のトップを集めた「災害廃棄物安全評価検討会」の了解の下に進めようとしている。しかし焼却処理は、日本の環境問題での非常識対応を世界に示すものとなる。

1)焼却を進めようとする政府・官僚は、次の3つの前提が抜け落ちている。

@ 焼却によって放射性物質が消えるわけでない。

A ごみ焼却は、物質の9割を微細な粒子とガスにし、1割が燃え殻(焼却灰or焼却主灰)とし、元の物質の1/10に減容化する処理である。

B 焼却過程で合成されるダイオキシン等の有害物質と微細な粒子とガスは、バグフィルターなどの除去装置で除去するようにしているが、すべて取れるわけではない。従って放射性物質は、微細な粒子やガスとして大気中に放出される。(福本勤精華大学講師―工学博士なども現状の市町村の焼却施設で除去できない点を考え、ご自身が提案する除去方法について実証実験を行うことを提起されている。)

従って福島県内の市町村の清掃工場や産業廃棄物処理施設で、燃やされ始めれば、福島第1に加え、放射性廃棄物を大気放出する発生源を多発化することになる。福島第1原発の「人災事故」、汚染水の海洋投棄に加え、非常識処理の3重奏となる。



2) 放射性物質及び汚染物は、環境法の適用をはずす

原発そしてそこから排出される放射性物質等は、環境関連法で治外法権の特別扱いを受け、原子力関連法でも、事故や不祥事によって放射性廃棄物が環境中に出てもとがめられる事のない、法律体系で事業者を守ってきた。
環境基本法では、「放射性物質及びその汚染物」(放射性物質等)の取り扱いは、「原子力基本法及び関連法で定める」(第13条)とし、その他の環境関連法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、廃棄物処理法など環境関連法でも、適用除外としてきた。

つまり放射性物質等は、大気や水質や、土壌を汚染する有害物の取り扱いを受けず、廃棄物として不法投棄や不法処理をしても何ら問われることのない取り扱いを受けてきた。

ダイオキシンや重金属、その他の有害化学物質と並び有害性が高く、ひとたび事故を起こせば生活し、働き、生存する場を広範囲に、幾代に渡って奪う究極の有害物質である放射性物質等をこれら環境関連法では、取り扱いの対象からはずしてきたのである。

では、原子力基本法や「核原料物質及び核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」では、放射性物質等は、どのように規制されるようになっているかというと、「原発の中から外に出ないようにする規制(目安)は設けたが、原発の外にでた時のことは、法律の対象外としてきた」「原発の外に出された時の規定はない」(経済産業省担当者談)という杜撰さである。

4月4日東電は、放射能汚染水を大量に海水投棄した。そのときの理由は、「ロンドン条約では、船舶、航空機からの海洋投棄は禁止されているが、陸上からの投棄は禁止対象ではない」という訳の分からない理由だった。
もし有害汚染物質を河川や湖、海などの公有海面に投棄すれば、不法投棄で逮捕される。やくざまがいの産廃業者が行い逮捕される不法投棄が許されるはずがないと調べると何と放射性物質等は、環境関連法から適用除外にしていたため、取り締まれないと言うのだ。(環境省担当者談)

電力事業者や国は、原発村の御用学者たちによって築いた「安全神話」によって原発推進政策を進めながら、事故を起こし環境や人の命、生活に取り返しのつかない被害をもたらしても決して責任を問われない法的仕組みを作ってきたといえる。

従ってこの仕組みをそのままにし、放射能汚染災害廃棄物を市町村の清掃工場や産業廃棄物処理施設で焼却始めれば、煙突からの排ガス規制、大気への放出規制、土壌、水への汚染防止規制や埋め立て規制も何もないままに、放射能汚染が多発的に広がる事になる。

多くの公害問題の事例が示すように、法的規制がないからといって、憲法で保障された生存権や生活権を奪う処置は許されない。放射能汚染災害廃棄物を燃やす事によって、放射性廃棄物の二次発生源を作った市町村や産業廃棄物業者は、影響被害の責任と補償を問われる事になる。



3) 国が謝罪し、責任を認め、対策を示すことが先だ

原発事故を起こし、放射性廃棄物を今も撒き散らしている責任は、事業者と国にある。

@ 国はこれまでの杜撰な原発推進政策の責任を認め、まず国民に謝罪すべきである。

A その上で原発事故の経過、放射性廃棄物による汚染の実態など一切を情報公開し

B 国の責任で東電と原発事故の収束を図るとともに、すでに汚染されているがれき、土壌、汚泥、その他の農漁業生産物の回収、除染処理についての方針を明らかにすべきである。

国と東電は、拡散した放射性廃棄物の処理方針を示さず、今回のがれき処理では、体よく県や市町村に処理を押し付け、責任を有耶無耶にしようとしている。福島県内だけでなく、放射能の高濃度汚染区域は、いわゆるホットスポットとして神奈川県足柄のお茶の葉や江東区の下水処理汚泥への高濃度蓄積など各地に影響を広げつつある。

一切合財の汚染物は、東電と国に引き取らせ、たとえば原発避難区域に集める。こうしたことなく福島県の各所で、汚染物の焼却を始めれば、発生源が多発化し、スピーディですら拡散による影響予測を追いかけられなくなる。発生源が福島第1原発に限られている今は、その日の風向きによって、外出や外での仕事を控えたり、子供を外で遊ばせないような対処も取っているが、市町村の焼却施設で燃やされ、発生源が増えれば、そうした自己防衛策すら取れなくなる。焼却による発生源の多発化を防ぎ、放射能の影響を遮断しなければならない。



4) 「災害廃棄物安全評価検討委員会」は行政の方針の追認委員会?

今回のがれきの焼却処理に承認を与える「災害廃棄物安全評価検討委員会」(以下検討会)は、放射能汚染廃棄物の焼却という世界でも初めての処理方針の決定を行おうとしている。しかしその持ち方にいくつかの疑問点がある。

@ 基本論議の欠落

まず第1に検討会の目的の中に「放射能汚染廃棄物は焼却してよいのか」という基本的な論議を行うことが、設定されていないことである。公式目的は福島県第1原発の避難区域に隣接する沿岸区域(浜通り地方及び中通地方)のがれきの処理に当たって、安全評価を行うとしている。がれきの「廃棄物の種類」「発生量」「汚染のレベル」を把握した上で、「安全評価」を行うとしている。

「安全評価」は福島の一地域の問題についての評価をするという形だが、一地方であれ、放射能汚染物質を燃やしてよいとなれば、一人歩きし、福島全域、東日本全域に適用されてゆくことになる。

基本論議を行わず、放射性廃棄物の焼却処理という実績を積み重ねながらそれがどこでも行われる処理となる。本当の狙いを隠した目的設定がそもそもおかしい。

今回焼却対象となっているがれきの放射線量は、仮置き場から1m離れたところで測っているが、1.7〜2.6msv/年であり、(*1)放射性物質の区分を示す指標であるクリアランスレベル<0.01msv/年>をはるかに越えている。(*2)したがってクリアランスレベルから言うと明らかに放射性物質である。

 がれきを放射性物質として認識して処理するなら、放射性物質は、廃棄物処理法の廃棄物の定義(第2条)からも適用除外されているため、市町村の焼却炉や産業廃棄物の焼却施設で焼却する際の規制は何もない。したがって机上の上で安全評価しても、管理運営される保証はなく、煙突から吐き出される放射性物質の拡散による危険性は防げない。もし検討会ががれきを放射性物質として認識した上で、取り扱うというのなら、まず「放射能汚染廃棄物の焼却」の是非を行い、現状の環境基本法他の環境諸法の整備を行うことが必要となる。

一方がれきが、従来のクリアランスレベルを超えていても放射性物質としては取り扱わないというのなら、実質クリアランスレベルを勝手に修正することになり、文部科学省が子供の年間許容放射線量を1msvから20msvに変えようとしたのと同じ過ちを犯すことになる。

A 会議非公開はなぜか?

第2にこのような大事な検討会は公開が原則である。ところが非公開なのだ。
委員会のメンバーを見ると、国立環境研究所の大垣眞一郎理事長、同大迫政浩資源循環・廃棄物研究センター長、そして廃棄物・資源循環学会会長の酒井伸一京都大学教授、大塚直早稲田大学教授など日本の廃棄物研究の権威者が委員として参加している。専門家によって評価を行う会議がなぜ非公開なのか?しかも今後の放射性廃棄物の処理の行方を決める重要な会議である。

がれきの焼却処理の方針を決定しようとする環境省の担当部署、適正処理・不法処理対策室に尋ねると、「活発に意見を出してもらうため」と言う。公開の場で自分の意見を言えない情けない専門家が委員になるはずはなく、本当の狙いは、会議議事録を事務局(官僚)のストーリー通りに作り上げたいということであろう。

メンバーは、行政が選んでいるとしても公開され傍聴が入り、議論の成り行きを聞かれていれば、あまりに不自然な議論の流れは、チェックされることになる。情報公開と会議の公開は一体のものであり、会議の非公開が示すものは、検討委員会は、都合の悪い情報は隠し、がれき焼却を承認するための委員会でしかないということである。

実際6月6日の東京新聞では、「福島の汚染可能性がれき―焼却埋めて容認へ」という見出しで「環境省が5日・・・がれきの焼却埋め立て方針を決め、19日の・・『検討会』で正式決定し、早ければ今月後半にも仮置き場からの移動を認める方向」と報じている。新聞でも検討会は、方針の是非を問う場とは見ていない。

B 専門論議のひどさ

第3の問題は、検討会で行われている専門論議のひどさである。本来ならば放射能汚染廃棄物を燃やした時、放射性物質が煙突からどれだけ放出され、拡散してゆくか。その結果周辺環境にどのように蓄積するのか。人の生命や健康、農業生産に与える影響は?そして幾代にも渡りその影響は持ち越されることがないのか?等々について検討されるのが安全評価であろう。生命や健康への影響、農業生産に関連した専門家は参加していない。
提出された資料を見る限り、議論は、焼却したとき焼却炉の既存の排ガス除去装置でどれだけ取れるかという点に絞られているように見える。しかもその論議が杜撰である。

大迫政浩国立環境研究所センター長からは、バグフィルターで99.9%捕捉できると言う報告が出され、その根拠として提出されたのは、「都市ごみ焼却施設から排出されるPM25微細粒子の挙動」といった別の目的の論文(*3)である。廃棄物関連の論文は、これまでも何百と報告されている。そのうち「焼却炉で有害物は99.9%除去できる」という論文を引き抜き説明しても、説得性を持たない。もっと除去率が低い報告はないのか?それぞれどのような条件での実験であったのか?など通常の専門家の議論であれば、討議される。しかも取り上げられた論文は、放射性廃棄物について実験したものではない。

ところがマスメディアでは、放射性廃棄物は、100%除去できるという報告が行われたと報道されてしまう。そもそも日本では市町村や産業廃棄物の焼却炉で放射性廃棄物を燃やさないことになっていて、そのような都合のよい実証データはないはずだ。環境省の担当者に聞いてみると、「それは100%取れるということでなく」「また断言できる話ではない」「排ガスは調べていない」と言う話である。つまり適当なのである。

そもそも実験室での実験や1.2回の実証実験で判断できることではない。

検討会に提出された資料や示された議事の経過を見ても、がれきの焼却に異議を唱え、データを提出した後は見られない。きっちとした専門家による安全評価を進める議論になっていないのだ。
原発村の専門家たちが「絶対安全」「耐震はM8.5でよい」と東電が進めた安全対策不備に蓋をし、原発事故の発生に手を貸してきた直後だけに、検討会に参加した専門家が行政の筋書きに沿って対応をすることになぜ抵抗しないのか?まったく不思議である。

一向に進まない原発事故収束策、何万人もの原発避難民の生活。仕事すら出来ない農漁民。二度とこのようなことを起こしてはならないと考えるのなら、委員会の公開を求め、焼却の是非論も議論に載せることを求めるべきだ。
入れられなければ委員会そのものを蹴ることを薦めたい。

このような重要問題は、市民団体や自治体、事業者の代表が入った中央環境審議会で公開の議論を行い、放射能被害を決して拡大してはならないという原則のもと方向性を定める必要がある。

わが国の環境行政は、3.11の2万5千余の死者と行方不明者を出した未曾有の災害を潜りながら、被災者の痛みを我が事にせず、原発事故が人災であったと言う反省もなく、今回の焼却方針を決めようとしている。
“喝!!”と叱りこれを許してはならない。



5) 焼却は東日本全域を放射能汚染で包む事になる。

今福島県のがれきは、避難区域や計画的避難区域のがれきはそのままにし、その他の地域のがれきは、136箇所の放射性仮設置き場に積み重ねられている。136箇所もあるため、学校や人家に近接しているところもある。そのため仮置き場が近くに出来たため、子供を疎開させた人もいる。

今回の処理は、仮設置き場を解消して欲しいと言う住民の声を受けて、減容化を計るための焼却ということである。

しかし燃やす事で焼却炉周辺に放射能の2次汚染の怖れがあることを説明したのだろうか?ごみの焼却は、煙突の高さによって排出される有害物が運ばれ降り積もる最大着地地点が違う。高さ50mで風下500m先、100mで1000m先とされている。比較的近辺に大きな影響を与えるため、焼却施設の近隣にある小学校で稼動を止めたら喘息になる子供が「10数%」から「0」なったという報告もある。(*4)また影響は地形や立地場所の風向きが、年間を通じてどの方向が強いかによっても大きく違い、周辺に住宅地や生産農家を抱える場所では、放射能拡散の影響は想像がつかない。

また焼却灰や飛灰(煤塵)には、焼却物の約10倍に濃縮した放射性汚染物が蓄積するため、この灰の処理を行う埋め立て処分場の周辺では、焼却場周辺と同様の問題を抱えることになる。
放射性廃棄物の焼却処理などという実験はどこでも行っていないため、ひとたび市町村で燃やし始め、農産物や水や土壌に影響が与えることが分かれば、それこそ風評被害どころではなく、福島県産のものはすべて売れなくなるぐらいの影響を与えることになる。
またがれきの組成の1例としては、以下の事例が検討委員会に資料提出されている。

・ 可燃ごみ(柱、壁、家具)23%
・ 不燃ごみ(コンクリート等)66%
・ 不燃ごみ(金属くず) 2%
・ 不燃ごみ(家電)4%

これで見ると70%が不燃ごみであり、これを焼却処理しても減容化に寄与することはない。それこそ第1原発の避難区域内に集め、原発収束後コンクリートなどを水で洗い流す除染処理と排水の浄化処理をする方が実践的である。

政府と官僚たちは、霞ヶ関周辺で会議をしていれば飯を食えるのだろうが、放射性物質による大気汚染が進み、農地の汚染が進めば、野菜や米作りだけでなく、畜産業も見通しが立たなくなり、本当に福島の農業がつぶれることになる。その影響は計り知れない。

福島で始まった焼却処理が、放射性廃棄物が高濃度に飛散したホットスポット地域での汚染物の焼却処理として広まれば、東日本各地で放射能汚染を広めることになり、次世代を担う子供たちに大きな影を落とすことになる。放射性廃棄物の自治体での焼却処理、発生源の多発化は、絶対やってはならない選択といえる。

* 1 災害廃棄物安全評価検討委員会 資料 別添1「福島県内の仮置き場における災害廃棄物の放射線モニタリング調査結果」より

* 2 がれきの放射線量の測定は、仮置き場から1mはなれたところで行っているが、なぜがれきそのものに接触させて測らないのか疑問である。1mは離れたところの測定は、仮説置き場の近隣への影響を見るという点では分かるが、そのがれきを燃やすというのだから、がれきそのものの測定を行う必要がある。たぶん10倍ぐらい値が違ってくるのではないか。

* 3 災害廃棄物安全評価検討委員会 資料  今井、塩田、高岡、大下、水野、森澤 「都市ごみ焼却施設から排出されるPM25微細粒子の挙動」2010廃棄物資源循環学会講演論文集

* 4「横浜市の巨大ごみ焼却場を2つ止めた?児童生徒疾病調査」西岡政子氏論文 「大丈夫か日本の環境政策〜市民的視座からあるべき環境政策を考える〜」2005年12月11日 環境行政改革フォーラムより

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